今夏に開催された「パリオリンピック2024」で、優勝したスペインにベスト8で敗れたサッカーU23日本代表。グループリーグでは3連勝を飾り、首位で突破してレベルの高さを見せつけるとともに、2026年北中米ワールドカップに向けて、大いに期待を持たせてくれた。
年内の日本代表の活動が終了したところで、欧州リーグやJリーグに戦いの場を移したヤングプレーヤーたちの「その後」の活躍を追ってみると、意外な結果が明らかになった。
ここでは欧州や国内に精通するサッカーライターが、18人の代表メンバーと4人のバックアップメンバーの活躍を、5段階で厳しく査定する。【前編】は守備陣から見ていきたい。
【GK】小久保玲央ブライアン/シント=トロイデンVV(ベルギー)/評価=1
今夏にベンフィカ(ポルトガル)から新天地に移籍。さっそくレギュラーの座をつかんだが、第15節のクラブ・ブルージュ戦で7失点を喫するなど、クリーンシート(0封試合)がめっぽう少ない。パリ五輪中は「国防ブライアン」と鉄壁の守備が絶賛され、日本代表入りも確実と思われたが、結果的に森保ジャパンには招集されなかった。A代表の守護神で同世代のGK鈴木彩艶との差は広がるばかりだ。
【GK】野澤大志ブランドン/FC東京/評価=3
実力者のGK波多野豪からポジションを奪った。パリでは第2GKの扱いだった悔しさをバネに、日本に戻ってからビッグセーブを連発。特にペナルティエリア内でのシュートパンチング率は、リーグ2位と高い。すでに「アジアカップ2023」でA代表のメンバーに選ばれ、小久保より先に鈴木のライバルへと浮上している。
【GK】佐々木雅士/柏レイソル/評価=1
今季、柏で先発出場したのは4試合のみ。しかも1分3敗と勝利に導けず、来季の巻き返しに期待する状況だ。両親が営むオムライスのキッチンカー「アマリージョ」が柏スタジアムに出店する際は、行列を作る人気ぶりだが…。
【DF】鈴木海音/ジュビロ磐田/評価=1
コンディション不良説が流れ、夏場以降に先発の座から外れた。クラブは勝ちきれない試合が続き、ついにJ2に降格してしまった。今後、どう巻き返すか注視したい。
【DF】西尾隆矢/セレッソ大阪/評価=4
パリ五輪の出場権をかけた「U23アジアカップ2024」では、初戦の中国戦で前半途中に一発退場。大舞台での失態を経験したことで「やんちゃ坊主」は急成長を遂げた。セレッソで不動のレギュラーで起用されると、ここまでのリーグ戦でイエローカード2枚、レッドカード0枚と、クリーンなプレーヤーに変貌している。
【DF】関根大輝/柏レイソル/評価=5
パリ五輪世代の掘り出し物と言われた逸材。サイドバックとして積極的な攻撃参加で見せ場を作るだけではなく、センターバックとしても187センチの高身長でボールをガンガン跳ね返す。10月と11月のアジア最終予選で日本代表に追加招集され、レジェンドの「長友塾」で鬼メンタルと体幹の強さを吸収した。
【DF】木村誠二/サガン鳥栖/評価=2
期限付き移籍先の鳥栖で出場機会を得るものの、チームは夏に主力をごっそり引き抜かれて大幅に戦力ダウン。早々にクラブはJ2降格が決まり、難しいシーズンを過ごす。筋トレにハマり、ヒップラインから脚の筋肉は馬並みに成長したが…。
【DF】高井幸大/フロンターレ川崎/評価4
パリ五輪で最年少の20歳ながら、9月に行われたアジア最終予選の中国戦でA代表デビュー。192センチのセンターバックは「日本の未来」と称される。11月のインドネシア戦では「ベンチ外になっただけで、SNSでトレンド入りするほどの注目度。
【DF】大畑歩夢/浦和レッズ/評価=3
パリ五輪で急成長したサイドバックは、大会後に浦和のレギュラーに定着。90分間上下動を繰り返せる運動量とともに、クロスの精度の高さは驚異。168センチと小柄ながら、ガツンとボールを奪える対人守備に強く、伸びしろだらけでA代表さえ「ひょっとしたら」と思わせる。
【DF】内野貴史/アル・ワスル(UAE)/評価=2
ドイツ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフから、8月にUAE王者のアル・ワスルに電撃移籍。年俸130万ドル(約1億9000万円)と報じられた。アジアのクラブの頂点を決めるACLEにも出場し、若手ながら異色のキャリアをたどる。とはいえ、レベルの高いドイツで戦っていた方がよかった、との声がもっぱらだ。
【MF】川﨑颯太/京都サンガ/評価=3
昨シーズンからクラブ最年少でキャプテンを務める大黒柱。圧巻だったのは、天皇杯の準々決勝で3-0の勝利に導いたジェフユナイテッド千葉戦。全てのゴールシーンを、巧みなパスで演出した。パリ五輪後にデンマーク1部のオールボーからオファーが届いたが、移籍は実現せず。だが、今冬にも海外クラブが狙っているとウワサされ、欧州挑戦する可能性は大だ。
【MF】藤田譲瑠チマ/シント=トロイデンVV(ベルギー)/評価=2
パリ五輪ではキャプテンとしてチームをまとめた。危険察知能力や切れ味鋭い縦パスなど、中盤の要はたぐいまれな才能を発揮。10月と11月のアジア最終予選で日本代表に選ばれた。パリ五輪ではA代表で即レギュラー争いに加わると評価されたが、同じポジションの遠藤航や守田英正の壁は高く、本人も「A代表に入ると、しょせん五輪レベルの選手だと感じる」と、現在は意気消沈中。
以上が前編の守備編だ。いかがだろうか。皆さんの査定と一致するか否か。しかし、2025年も彼らに期待する気持ちは変わらない。
(風吹啓太)