〈審判員はプレーヤー、コーチ、監督または控えのプレーヤーが裁定に異議を唱えたり、スポーツマンらしくない言動をとった場合には、その出場資格を奪って試合から除く権限を持つ〉
これは野球規則の「8.01審判員の資格と権限」に記された文言だ。読んで字のごとく、これは野球の試合での球審の権限が絶対であることを定めたもの。
とはいっても、審判も選手も同じ人間同士。時には判定をめぐって激しくぶつかり合うこともある。もしそれが連続して起こったとすれば…。
それは2022年に勃発した、千葉ロッテと白井一行球審ほか審判団との、連続退場騒動だった。発端は4月24日のオリックス戦(京セラドーム)。佐々木朗希が判定に対して苦笑いするなど、不服そうなな態度を示したとして、白井球審がマウンドに詰め寄った。これにロッテナインが不信感を募らせる。
続く5月14日のオリックス戦でも9回二死一・二塁の場面で、エチェバリアの見逃し三振ストライク判定に、ロッテ・井口資仁監督が抗議。審判団はこれを侮辱行為とみなし、試合終了後に井口監督は退場処分を受けることに。
二度目となるロッテVS審判団の激突。そんなピリピリムードで迎えた翌5月15日のオリックス戦で、決定的な事態が起きる。
2回、先発登板したオリックスの宮城大弥に対し、先頭打者レアードは、初球ファウルに続き、ゾーンギリギリの2球目をストライク、さらに低めの3球目もストライク判定で3球三振に倒れた。そしてベンチに下がる途中、レアードが白井球審に何か言葉を投げかけたのだ。
この行動に対し、白井球審は退場を宣言。激怒したレアードが白井球審に食ってかかり、井口監督がベンチを飛び出した。
マイクを取った白井氏は「暴言により退場処分といたします」と場内アナウンス。早々に4番打者を欠いたロッテは5-8で敗れ、2連敗を喫したのだった。
白井球審は試合後、レアードへの退場宣告について、報道陣にこう説明した。
「英語で言われているので、何を言われているか、自分で理解してからこれは暴言だなと(判断した)」
具体的な内容については明かさなかったものの、白井球審とロッテの騒動はこれで三度目。
二度あることは三度ある、とはよく言ったものだが、佐々木の騒動から、井口監督の退場で、審判団とロッテは必要以上に過敏になっていたのか。
確かにルールブックは絶対で、その番人である審判は絶対の存在だ。だが、ファンはチームと審判とのいざこざを見るために、大枚をはたいて球場に足を運んでいるわけではない。ロッテ、審判団双方の因縁対決で、ファンが置き去りにされた騒動だったのである。
(山川敦司)