クリスマスも終わって、いよいよ今年も残すところあとわずかになった。ところで、クリスマスイブの夜、世界中の子供たちにプレゼントを配ってくれるサンタクロースには、世にも恐ろしい言い伝えがあることをご存じだろうか。
サンタクロースのモデルになったとされる、キリスト教の伝説的な聖人「聖ニコラウス」は、3世紀のローマ帝国、現在はトルコ領となっているアナトリア半島南西部のミュラの町で司教を務めていたとされている。
ある日のこと、町の肉屋の前を通りかかったニコラウスが、この店から放たれる異様な気配を感じ、店に宿泊させてもらうことになった。実はこの肉屋の主人は7年前、店に泊まった3人の子供を殺害。それだけでなく、子供たちを細かく切り刻んだ後、塩桶に入れて隠していたのである。
そして7年後、ニコラウスがここに泊まることになったわけだが、夕食の時間になり、ニコラウスは店の主人に静かな口調でこう言った。
「7年前にあなたが漬けた塩漬け肉を所望したいので、出してほしいのですが」
瞬間、顔面蒼白になる店の主人。そのままの格好で、店の外へと逃げ出した。ニコラウスは続けて言う。
「肉屋よ、逃げるでない。悔い改めなさい!」
そして塩桶の縁に座ったニコラウスが3本の指を伸ばすと、なんと切り刻まれた子供たちが元の姿に戻り、3人とも起き上がった。そしてそれぞれが「よく眠った」「僕もだ」、最後のひとりは「天国にいるようだった」と話したという。
この物語は12世紀の文献に記載された。16世紀には「アンヌ・ド・ブルターニュの大いなる時祷書」に「肉屋から3人の子供を救う聖ニコラウス」として描かれ、童謡として語り継がれた。このエピソードが、子供たちにとっての守護者、さらに子供たちにプレゼントと幸せをもたらすサンタクロースの元になったとされる。
だが他の言い伝えによれば、ニコラウスには凶暴な裏の顔があり、自分の考えに相反する異端の司祭アリウスを痛めつけ、破門されたのだと。ニコラウスが身に着ける赤い衣装は、その時に飛び散った返り血だった、との説もある。
毎年クリスマスになると世界中を駆け回り、子供たちへプレゼントを配る優しいサンタクロース。だその裏には、全く別の恐ろしい秘話が隠されているのかもしれない。
(ジョン・ドゥ)