2024年12月27日、NASAは近年に打ち上げた宇宙探査機の中で、太陽に最も近づいた探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が現在も正常に作動していると発表した。同探査機は太陽から放出される「太陽風」と呼ばれる粒子の流れや、太陽の大気層である「コロナ」がなぜ100万度超えの高温になるのか、等々の疑問を解明する手掛かりをつかむため、2018年に打ち上げられたものだ。
最大時速69万2000キロで大気層を飛行していた同機は、太陽の表面から610万キロ付近まで接近。摂氏982の高温に耐えた。現在もなお正常に作動していることに、NASA研究所内からは歓喜の声が上がっている。
NASAにより打ち上げられた探査機マリナー4号が初めて火星付近に到達したのは、1965年7月だった。その後、マリナー6号、7号、9号などにより、1972年までに火星表面の約70%を撮影することに成功。1976年にはついにバイキング1号が、火星への着陸に成功。残念ながら、生命の痕跡は見つからなかった。
それから78年目となる2024年9月、科学雑誌「Nature Astronomy」に、ある論文が発表され、科学者たちを驚愕させた。火星に降り立ったバイキング1号と2号が、誤って火星の生命を消滅させてしまった可能性がある、というものだったからだ。
論文の主は、ドイツ・ベルリン工科大学の天体生物学者ディルク・シュルツェ=マクフ氏。米ワシントン州立大学で地球環境科学部教授を務める地質学者でもある。
当時のバイキング計画における代謝と光合成の痕跡を確認する実験では、生命が存在することを示す結果が出た。そしてガス交換実験検査では、土の中に生命の痕跡がないことがわかった。ただ、有機化合物の有無を調べるガスクロマトグラフ質量分析で、生命の痕跡を検出。
しかしその後の分析により、これが否定されることになる。有機化合物が存在しない以上、生物は存在しない。つまり、火星に生物の痕跡はなかった、と結論づけられたのである。
ただし、これは1970年代の分析に基づいた仮説。マクフ氏によれば、乾燥した環境の中でも過酸化水素を利用して生存する生命が存在する。つまり、ガスクロマトグラフ質量分析で有機化合物が検出されたのではないのか、というのだ。
ところがこの検査を行う際には事前にサンプルを加熱するため、その過程で生命体を焼き殺してしまった可能性がある。そう考えれば、過程で二酸化炭素が発生したことには頷けるのだと。
論文で同氏は、探査機による地表での検査実験過程で、乾燥環境に適応した火星微生物を「溺死」させたかもしれない、つまりNASAが当時行った検査は、火星の生命にとっては致命的なものだった可能性がある、と結んでいるのだ。
むろん現段階では、同氏の考察は仮説。いずれ、科学者たちによって解き明かされる日が来ることだろう。
(ジョン・ドゥ)