競馬界で「岩田パパ」と呼ばれる岩田康誠騎手が中京競馬場から京都競馬場へ移動する際、スマホの不適切な使用が確認され、JRAから全馬乗り替わりと騎乗停止処分が発表されたのは昨年12月15日朝のことだった。岩田はこの日のGⅠ・朝日杯FSでダイシンラー(牡2、栗東・梅田智之厩舎)に騎乗予定だったが急遽、横山典弘に乗り替わることになる。
岩田の騎乗停止処分といえば、特に思い出されるのは2021年4月24日に勃発した暴言幅寄せ事件だろう。阪神競馬場での6R、3歳1勝クラス(ダート1800メートル)。返し馬(馬場に入場した競走馬が発走時刻までに行うウォーミングアップ)の際に、スウィープザボード騎乗の岩田が、テイエムマジックの藤懸貴志を睨みつけ、馬ごと幅寄せしてラチ沿いに追い詰めて威嚇。さらに暴言を吐いたのである。
レースは藤懸が2着、岩田は5着となったのだが、岩田の言動を目撃していた複数の騎手らが裁決委員に通報。JRA側の事情聴取で岩田が事実を認めたため、14日間(開催4日間)の騎乗停止が適用され、関係者はその後の調整に追われることになった。
岩田この時点でGⅠ通算25勝のトップジョッキー。そんなベテランがブチ切れた理由は何か。競馬担当記者が当時を振り返る。
「実はこの日の阪神2Rで、ルーキーの角田大和が騎乗するエムティースマイルが4コーナーで外へ斜行し、藤懸のシュンイと後方にいた岩田のコートゴシップが連動する形でアオリを食うことになりました。その際、藤懸の位置取りが許せなかった岩田は、2R直後の裁決室で『おんどりゃ、あんぐらいのことで(馬から)立つな。耐えろや』と藤懸に暴言を吐いたそうです。ただ、角田は3月にデビューしたばかりのルーキー。藤懸も岩田よりはるか格下ですからね。本来であれば、きちんとアドバイスすればいいだけの話。それを恫喝するとは。大人げないという言葉に尽きますね」
コトによってはパワハラ行為とみなされる、岩田の粗暴ぶり。最終的に事実関係を認め「すみませんでした」と謝罪したのだが、開催4日間の騎乗停止処分には「処分が甘すぎる」の声が出たのである。
(山川敦司)