昨年のアメリカ大統領選挙で勝利したトランプ氏がいよいよ1月20日に就任式を迎える。この日を境に世界情勢が激変することだけは間違いなさそうだ。
まずは、トランプ氏がこれまでブチ上げてきた政策を列挙しよう。ウクライナ戦争の「24時間以内」の終結、メキシコやカナダ、中国への関税引き上げ、気候変動対策「パリ協定」の離脱と化石燃料の活用などなど、まさに「トランプ2.0」と言うべき内容だ。
20日にはさっそく25以上の大統領令が発令される見込みだが、国際ジャーナリストの山田敏弘氏はこう解説する。
「トランプ氏にとってこの日は、大統領としての仕事をスタートさせると同時に、前回の大統領選挙の妨害と圧力、国の機密文書の持ち出し、不倫口止め料を巡る問題など、4つの刑事事件を捜査したFBIや諜報機関との戦いの始まりでもあります。『犯罪者』に仕立て上げられたみずからの汚名をそそぐことが彼にとっての急務。FBIは創設以来の大改革が行われる予定で、長官には、国防総省の高官を務めたカシュ・パテル氏の起用を明らかにしています。彼はトランプの熱狂的な支持者で、FBI批判の急先鋒。FBIは最大の敵を長官に迎えることになります」
これに限らずトランプ氏は、首都ワシントンからバイデン氏の民主党政権に関わったスタッフを一掃する見込みで、大統領選から訴え続けてきた「ディープステート」(闇の政府)の解体を一気に前進させそうな気配なのだ。
そしてこれを指揮するのが「政府効率化省」を率いる実業家のイーロン・マスク氏で、
「総数300万人いる政府職員のうち50万人が首切りの対象になると報じられています。特にトランプ氏の支持基盤である東海岸では大量の失業者が発生するでしょう。一方、民主党支持者が多い西海岸では、職員のリストラを巡って両政党の対立が激化。内戦状態になるとの見方もあります」(在米ジャーナリスト)
旧政権の「闇の政府」とのバトルが最高潮に達する中、未曽有の混乱はアメリカ国外にも広がっていく。中でも大きな激変の波が押し寄せるのが北朝鮮だ。
「韓国の尹錫悦政権が戒厳令の失敗でしばらくは半ば無政府状態。トランプの在韓米軍撤退の意向も加わって、北朝鮮が国際政治の場でのプレゼンスを増すでしょう。アメリカ、北朝鮮の両国とも、米朝首脳会談を実現させようとヤル気マンマンで、早期に実現する可能性が高い。そうなると北朝鮮が派兵したロシアとウクライナの停戦合意にも影響を及ぼします。兵隊の撤収や核開発の妥協、金王朝の現体制の維持を前提とした経済援助など、場合によっては国際政治のキャスティングボートさえ握りかねない。となれば、もちろん中国は面白くないはずですが、中国はアメリカとの全面経済戦争に直面していて、北朝鮮どころではないかもしれません」(前出・山田氏)
韓国の大混乱に乗じて、北朝鮮が外交で存在感を示してアジアを飲み込むというのか─。昨年12月には、シリアで50年以上続いたアサド家の独裁政権があっけなく崩壊した。何が起きても不思議ではないが、トランプ氏と北朝鮮の動きには警戒が必要だ。