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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「新日本プロレスに棚橋・中邑時代が本格到来!」

 2007年1月4日の新日本プロレスの東京ドームは、開催が危ぶまれていたものの、全日本プロレスの全面協力で、両団体の35周年記念大会として実現の運びとなった。

 メインイベントでは武藤敬司と蝶野正洋がコンビを結成して、天山広吉&小島聡のテンコジに勝利し、フィナーレはビジョンに橋本真也の雄姿が浮かんで武藤&蝶野との闘魂三銃士揃い踏みという感動的なもの。見方を変えれば、当時のプロレス界は90年代を牽引した三銃士の力を借りなければならない状況にあったとも言える。

 大会終了後、全日本の社長でもある武藤は「いや、悔しいね。仏様の力は借りたくなかったよ。今後は団体として切磋琢磨していかないと。なあなあになるより1回区切った方がいい」とコメントしたが、その言葉通りに以後はそれぞれの団体の確立に邁進した。

 新日本では春に1つの事件が─。

 05年5月に社長に就任して長州力を現場監督に復帰させ、経営危機を乗り切るために株式会社ユークスの子会社化を実現させたサイモン・ケリー猪木が3月9日に「マッチメークなどを巡って会社と意見が合わない」として辞任を表明。同月26日に受理されて、義父アントニオ猪木が設立を発表したばかりのIGF(イノキ・ゲノム・フェデレーション)に合流したのである。

 だがサイモン辞任後もユークスは支援を約束して、副社長の菅林直樹が社長に就任。現在も取締役会長を務める、菅林の経営手腕は新日本に安定をもたらした。

 リング上では前年06年7月にジャイアント・バーナードを破ってIWGPヘビー級王座を初戴冠、ユークス新体制のエースになり、天山、中邑真輔、全日本の太陽ケア、金本浩二の挑戦を順調に退けてきた棚橋弘至が、4.13大阪で02年~ 03年の新日本迷走時代に〝ミスターIWGP〟として支えた永田裕志にベルトを明け渡した。

 これで時計の針が戻ったかに見えたが、棚橋は夏の「G1クライマックス」の優勝決定戦で永田を下して、雪辱を果たすと同時に初優勝。その勢いのまま10.8両国で、永田からIWGP奪回に成功した。

 その棚橋に待ったをかけたのが中邑だ。08年1.4東京ドームでランドスライドを炸裂させて4年ぶり2度目のIWGP戴冠を果たした中邑は、IWGPベルト統一に乗り出す。

 06年7月、来日をドタキャンしたブロック・レスナーはIWGP王座を剝奪され、王座決定トーナメントによって棚橋が新王者になったが、レスナーがベルト(05年にリニューアルされていた3代目ベルト)を返却しなかったため、新日本は2代目のベルトを使用せざるをえなかった。つまり第45代王者・棚橋から永田、中邑は2代目のベルトを巻いていたのだ。

 そしてレスナーはベルトを返さないばかりか、07年6.29両国のIGF旗揚げ戦でカート・アングルとIWGP防衛戦を行い、アングルに敗れてしまったから状況は複雑化。

 新日本は08年1.4東京ドームにアングルを招聘して、3代目IWGPベルトを取り戻すべく永田とのベルト争奪戦を組んだものの、アングルが勝利したために取り戻せず。同日にメインで棚橋を下して第47代王者になった中邑が、アングルに統一戦をアピールした。

 2.17両国で中邑とアングルがそれぞれにベルトを持って入場し、IWGP実行委員会の山本小鉄立ち合いのもとでベルト統一戦が行われ、中邑が腕ひしぎ十字固めで勝利。

 2代目のベルトを腰に巻き、3代目のベルトを肩にした中邑は「今日からが本当のIWGPです。IWGPは世界一‥‥誰にも負けない。ここのリングはどこにも負けない。一番すげぇのはプロレスなんだよ!」と高らかに宣言した。

 中邑は3月2日、ゼロワンMAXの後楽園ホールにおける橋本真也メモリアルマッチに2代目ベルトを巻いて出場して、佐藤耕平に腕ひしぎ十字固めで勝利すると、本部席の橋本の愛息・大地に手渡している。

 97年3月に新調された2代目のベルトを初めて巻いたのは橋本。05年7月に橋本急逝後、橋本家に寄贈されていたが、レスナーが3代目ベルトを返さないという異常事態により、再び使用されていた。中邑は改めて橋本家に返還したのだ。

 なお、3代目ベルトは封印され、3月9日の愛知県体育館で4代目の新ベルトが中邑に贈呈された。

 中邑にIWGP王座を奪われた棚橋もすぐに巻き返した。3月に開催された春の最強決定トーナメント「ニュージャパンカップ」を勝ち進み、3.23尼崎でバーナードを攻略して3年ぶり2度目の優勝を成し遂げて「尼崎の皆さん、愛してま~す!」と叫んだ。

 99年1.4東京ドームの橋本VS小川直也から突入した新日本暗黒時代に、プロレスと総合格闘技の両面から育成された〝選ばれし神の子〟中邑真輔、そして純プロレスを邁進して新日本に明るさをもたらした〝太陽の天才児〟棚橋弘至。その2人の時代が到来した。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

写真・ 山内猛

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