かつては若者が安く住める国として人気を誇ったタイだが、近年はその状況に大きな変化が訪れている。特に顕著なのが、日系企業の活動や日本人駐在員の数。円安の影響や現地の経済事情の変化により、タイにおける日本人の存在感が薄れつつある。
タイはかつて日本企業の進出先として有力な地であり、駐在員が日本から数多く派遣されていた。日本食レストランは日本人で賑わい、日本語が通じる環境が整備されていたのだ。
ところが現在、円安が進行する中で日本企業の進出は鈍化し、現地駐在員の数も大幅に減少。この背景には、タイ市場への参入企業の変化がある。中国の自動車メーカーなどが積極的に進出し、現地でのプレゼンスを拡大しているのに対し、日系企業はその競争力を徐々に失いつつあるのだ。
さらには、飲食店などで現地採用される日本人の数も減少傾向にある。かつては日本語しか話せなくても、日本人というだけで採用されるケースが多かった。以前の日系飲食店は日本人駐在員や観光客が主な顧客層だったが、今では富裕層のタイ人や、欧米からの外国人旅行者が多く訪れる場所となっている。円安による旅行費用の高騰が、日本人観光客の減少を招いていることが一因だ。
そのため、現在では日本人よりも英語を流暢に話せるタイ人が求められる傾向が強まっている。英語を話せる人材を雇用する方が、企業にとってコストパフォーマンスが高いと判断されているためだ。
このように、タイに進出する日本人の若者の存在感はかつてのような強さを失いつつある。日本国内で未来を見い出せず海外に目を向ける若い世代は今後、どの国を目指すのか。タイで浮かび上がるこの現象は、日本人の海外移住・進出の新たな動向を示唆しているのかもしれない。