バイデン前大統領による日本製鉄のUSスチール買収禁止命令、トランプ新大統領の関税政策など、暗雲垂れ込める日米関係だが、世の中捨てたものじゃない。イチロー氏の米野球殿堂入り前にX上で〈イチローって誰?〉と暴言を吐いていた偽記者のアカウントが、1月26日までに永久凍結された。
問題のアカウントは「@TooGooden19」。ナショナルインクワイアラー誌シニアライターのマーク・グーデン氏を名乗り、1月13日に〈イチローには投票しなかった〉と、全米記者協会(BBWAA)の投票用紙の写真をアップしていた。投票用紙にはUCLAを卒業後、フィリーズとドジャースで活躍し「シルバーフォックス」と呼ばれた名二塁手チェース・アトリーのチェック欄にのみ、チェックがつけられていた。そしてこう書き込まれている。
〈私が担当しているニューヨーク・メッツのファンには悪いが、これが私の投票用紙だ。熟考の末にこうした。私は唯一人、ピュリツァー賞を3度受賞者した有資格投票者であることを誇りに思う〉
〈イチローって誰? そんな選手のゲームは見たことない〉
これにはアメリカだけでなく、イタリアやキューバの野球ファンも非難囂々で、
「BBWAAの殿堂入り投票者名簿にオマエの名前が載ってないぞ」
「オマエの投票用紙だけフォントが違うぞ」
「偽の投票用紙まで作ってまで目立ちたい。ただのバカ」
と辛辣かつ鋭い指摘が相次いでいた。
ナショナルインクワイアラー誌記者がイチローに投票しなかったのか、同誌に質問をしてみたが、同誌公式アカウントは1月24日付で、次のように説明した。
〈マーク・グーデンを装う詐欺師がいる。@TooGooden19は偽物です。正式アカウントは@NatlInquirerと@TooGooden18です。@TooGooden19のほかにも記者の偽アカウントを見つけたら報告してください〉
そして偽アカウントは永久凍結された。米裁判所は過去に偽アカウントに対し、賠償金200万円の支払い命令を出しており、偽記者も同誌とグーデン記者に訴えられた場合、相応の賠償金を支払うことになるだろう。
394票のうち誰がイチロー氏に投票しなかったのかは、不明のまま。米データ会社コーディファイは「BBWAAはイチローに票を投じなかった記者の今後の投票権を剥奪すべきだ」と断じている。
2024年の野球殿堂では有資格者385人中306人が、BBWAA公式サイト上で投票結果を公開。投票は記名式で、本人の同意なく公表はできないが、投票結果公表に協力しない記者約80人の1人であることは確実で、今季投票権が剥奪された記者がいたら、その記者が「犯人」なのだろう。殿堂入り後、イチローはこう呼びかけた。
「どうやら1人、投票してくれなかった人がいるようですが、ぜひ自宅に招待して一緒にお酒を飲みたいので、シアトルまでお越しください」
イチローの「サシ飲み」は実現するか。
(那須優子)