巨人に新加入した田中将大が、春季キャンプの目玉に躍り出た。
第1クール3日目、田中は初のブルペン入りで計36球を投げ込むと、
「投げている感覚が違う。めちゃくちゃいいです」
納得の表情でブルペンをあとにした。楽天から事実上の戦力外通告を受け、一時は引退すら取り沙汰されたが、新天地でかつての勢いある投球を見せることになるとは…。
田中が復活の兆しを見せているのは、久保康生巡回コーチによる「魔改造」が大きいといわれる。久保コーチは全盛期の田中の投球を見返し、横回転になる下がった右手を「縦回転」にするよう指導。これが功を奏したようだ。田中ほどの大投手にフォーム変更を勧めるのは、普通のコーチにははばかれるところ。66歳の大ベテランだからこその指導といっていいだろう。
事実、久保コーチの「魔改造」はこれまで、数多くの実績を上げている。特に阪神コーチ時代には、何人もの投手を復活させているのだ。
泣かず飛ばずでクビ寸前だったランディ・メッセンジャーは、久保コーチの指導でフォームを修正し、球界屈指の神助っ人に。ソフトバンクを戦力外になったジェイソン・スタンリッジも「魔改造」によるフォーム修正で、ローテーション投手にまで成長した。スタンジッジはその後、ソフトバンク、ロッテと渡り歩き、2018年の引退まで活躍を続けた。
名コーチの実績はまだまだある。2016年に阪神に入団したマルコス・マテオが調子を落とした際には、フォーム修正を担当。その後、マテオはファームから1軍に復帰し、防御率1.80の活躍を見せた。「当たれば儲けもの」「ドミニカくじ」といわれた年俸5000万円のラファエル・ドリスは、久保コーチの指導により、ノーコンを克服。2017年には37セーブで、最多セーブのタイトルを獲得した。
2014年にオリックスからトレードで阪神へ移籍した桑原謙太朗も、久保コーチの助言があって、2017年に39ホールドを記録。最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した。NPB球団への在籍が連続3シーズン以上で、前々年までに1軍公式戦に出場していながら前年に出場機会のなかった選手がレギュラーシーズンでタイトルを獲得したのは、桑原が初めてという快挙だった。
残念ながら久保コーチは阪神時代の藤浪晋太郎を直接は指導しておらず、一緒にゴルフをラウンドして精神的なケアに務めるにとどまっている。もし久保コーチの「魔改造」があれば今頃、藤浪はノーコンを克服して、メジャリーガーとして大活躍していたかもしれない。
田中の200勝達成はもはや約束されたようにも思えるが、はたしてどうなるだろうか。
(ケン高田)