中日からメジャーリーグへのポスティング移籍を目指した小笠原慎之介が交渉期限の最終日、ワシントン・ナショナルズとの契約にこぎつけた。ナショナルズは2019年にワールドシリーズを制覇しているが、以降は勝率5割を割っており、昨季も71勝91敗でナ・リーグ東地区5位と低迷した。メジャーリーグを取材するジャーナリストが言う。
「チームは世代交代の過渡期にあります。でも投手に関しては期待できそうな若手が何人も頭角を現しており、小笠原の先発ローテーション入りを危ぶむ声が聞かれたほどです」
2024年オフに獲得したマイケル・ソロカなど4投手が「先発ローテーション入り確実」とされ、残り1枠をDJ・ハーツ、ミッチェル・パーカー、小笠原の3人が争う図式が予想されている。奇しくもハーツ、パーカーとも左投手なので、小笠原はオープン戦でインパクトの強い投球を見せなければならないだろう。
しかし、小笠原のピンチはこれだけではない。いろいろな意味で、中日時代を思い出すことになるのではないだろうか。
「キーバート・ルイーズ捕手は、打撃力でレギュラーに上り詰めました。ところが捕球面では低めの変化球、とりわけ縦の軌道の変化球に関してはぎこちない」
捕球がおぼつかなくて、本来なら「ストライク・コール」される変化球が「ボール」と判定されるかもしれない。中日時代には考えれないような「バッテリーミス」が起こるかもしれない。
そしてデーブ・マルティネス監督は「個性的な指揮官」だ。
「いわゆる激情家です。就任2年目にワールドシリーズを制覇した手腕は今も高く評価されていますが、怒ると手がつけられなくなる。味方選手を激しく叱ることも珍しくありません」(前出・ジャーナリスト)
それは2023年6月、対戦相手側の守備妨害とされてもおかしくない場面でそれが認められず、サヨナラ負けを喫した試合。試合後の会見で大暴れし、問題のシーンの写真を片手に大演説を繰り広げたそうだ。
中日の立浪和義前監督にも、練習中の私語を許さない厳しい一面があった。中日の歴代監督には、マルティネス監督に勝るとも劣らない激情家がいた。そんな指揮官の下でやってきた「免疫」はあるので、小笠原がチームに溶け込むのに、さほどの時間はかからないだろう。
しかし、今回のメジャーリーグ挑戦には「環境を変えたい」との思いがあっただろう。スパッと心機一転とはいかない要素が、なんとも心配なのである。
(飯山満/スポーツライター)