その珍事は2月16日の京都5レース(3歳未勝利、芝2000メートル)で起きた。
14頭がエントリーしたこの一戦では、圧倒的1番人気(単勝1.3倍)に推されたロードレジェロ(牡3)が2着に敗れ、11番人気のオデット(牝3)がハナ差の1着でゴールイン。単勝の払い戻しは1万5630円という超大穴馬券となった。
ところが、だ。ここで場内はさらに騒然となる。なんと馬単の払戻金が単勝の払戻金を下回る珍事が発生したのだ。事実、馬単の払戻金は1万4930円と、単勝に比べて700円も少ないという、驚きの結果だった。
馬単の払戻金が単勝の払戻金を下回った事例は過去に3回あるが、いずれもが「2着同着」という例外的なケースでのものだった。
2着馬が2頭いた場合、馬単の払戻金は2点に按分されてしまう。その結果、とりわけ人気馬と組み合わせた馬単で、払戻金が単勝を下回ってしまうのである。
ところが今回は、2着同着ではない。つまり京都5レースで起きた「逆転現象」はJRA史上初となる珍事だったのである。では競馬ファンは今回の珍事から、何を学べばいいのか。
例えば穴党が千載一遇の「超大穴馬」を見つけ出したとしよう。この時、多くは「この超大穴馬で払戻金を最大化したい」という欲望に駆られる。ましてや、間違っても連(2着以内)は外さないと考えられる「大本命馬」がいる場合は、なおさらだ。その結果、究極の結論として「超大穴馬」から「大本命馬」への「馬単1点勝負」という、乾坤一擲の勝負馬券が浮上してくる。
しかし、この最大化戦術には大きな落とし穴が潜んでいる。
仮に狙った超大穴馬が激走して1着に来たとしても、大本命馬がキッチリと2着に飛び込む保証はない。この点は馬連1点勝負の場合も同様で、大本命馬が3着以下に沈んでしまえば、それこそ「アッチッチ」の大ハズレになってしまうのだ。
「これぞ!」という超大穴馬を見つけ出した時には「欲をかかない」のが鉄則。結局、狙った超大穴馬が不発に終わる場合のリスクを考え、「複勝を保険にした単複勝負」がベストの選択肢となる。勝利の極意は「当たりやすい馬券を買う」に尽きるのだ。
(日高次郎/競馬アナリスト)