侍ジャパンの連覇は困難か。来年3月に行われる野球の国・地域別対抗戦、第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、投球間に時間制限を設ける「ピッチクロック」が初導入されることが確定した。今春の予選から採用されるという。これが日本には大きな不利に働くことは間違いない。
ピッチクロックは2023年からメジャーリーグで導入されており、現行のルールでは、走者がいないケースでは15秒以内、走者がいる場合には18秒以内に投球動作に入らなければならない。違反すると1ボールが加えられる。
また、打者に関しては、制限時間の8秒前までに打席に入り、打つ準備の完了が義務付けられている。違反すれば自動的に1ストライクが追加されることになっている。
メジャーリーグの取材に携わるスポーツライターが説明する。
「メジャー関係者はスピードアップの観点から、WBCでもピッチクロックを持ち込みたくて仕方がない。ピッチクロックによって1球1球の間隔が短くなり、その結果、肩肘の負担が増して故障のリスクにつながる、との声がありますが、現状ではそこまで大きなトラブルは起きていない。アメリカや中南米出身選手はメジャーでプレーする者が多数おり、今さらWBCにピッチクロックが導入されても大きな混乱はない。問題は日本を中心としたアジア勢なんです」
2023年の第5回大会で、侍ジャパンは優勝。大谷翔平がMVPを獲得する大活躍を見せた。アメリカとの決勝戦では投手・大谷が魔球スイーパーでマイク・トラウトを三振に仕留めたシーンが語り草になっているが、もしピッチクロックが導入されていば、あの名シーンは生まれなかった、との声がある。当時、現地で取材していたマスコミ関係者は、
「あの大会ではシーズン開幕前で、ピッチクロックは導入されていませんでしたからね。あの1球を投じるのに、どれだけ時間がかかっていたことか。もし1ボールが加えられていたら、違う結末になっていたかもしれません」
しかも次回のWBCには、大きな不安要素が存在している。前回、侍ジャパンの中心投手として活躍した大谷、山本由伸、佐々木朗希がともにドジャースに在籍しており、ドジャースが出し渋る公算が大だからだ。前出のスポーツライターは、
「ドジャースが主力投手3人もWBCに参加させるわけがない。仮になんらかのトラブルが発生してプレーができなくなれば、大変なことになる。普通に考えれば、よくて2人。大谷は打者専念で、投手は山本か佐々木のどちらかじゃないですか」
やはり世界の頂点を守り続けることは、容易ではないようだ。
(阿部勝彦)