早いもので春の中山開催に移って2週目を迎え、メインは弥生賞ディープインパクト記念が行われる。周知のとおり皐月賞のトライアルレース(3着馬まで本番の優先出走権が与えられる)で、毎度のこと顔ぶれはなかなかだ。
同じトライアルのスプリングS(3月16日)をはじめ、前哨戦にあたるレースの中では、やはりこの弥生賞で上位争いを演じた馬がクラシックで活躍することが多い。
03年に馬単が導入されて以降、これまでの22年間でみると、三冠馬に輝き、このレースの冠名をいただいたディープインパクト(05年)をはじめ、ロジユニヴァース(09年ダービー)、ヴィクトワールピサ(10年皐月賞)、ワンアンドオンリー(14年ダービー)、マカヒキ(16年ダービー)、ワグネリアン(18年ダービー)、タイトルホルダー(21年菊花賞)、ドウデュース(22年ダービー)、アスクビクターモア(22年菊花賞)、タスティエーラ(23年ダービー)と錚々たる顔ぶれである。
それだけ注目すべき重賞であると同時に、春競馬も本番間近と意識せざるをえないが、まずは今年の顔ぶれを見てみよう。
新馬―葉牡丹賞を連勝中のヴィンセンシオ、若駒S勝ちのジュタ、やはり新馬―エリカ賞と2連勝中のナグルファル、ホープフルSで3着に好走したファウストラーゼン、朝日杯FS2着馬のミュージアムマイルなど、クラシック候補に挙がっている素質馬も多い。
ここでふるいにかけられ、残るのはどの馬か。厳しい戦いが待っているだけに、馬券的には簡単なようで結構、難解な一戦とみるべきだろう。
過去22年のデータでは馬単での万馬券が5回(馬連は2回)。この間、1番人気馬は9勝(2着5回)、2番人気馬は6勝(2着3回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は5回。つまり、比較的人気サイドで決着する傾向だが、若駒同士の戦いだけに、各出走馬の力量を推し量れないケースも多々あり、波乱の決着になることもままある。
昨年は6、3、9番人気で決まって馬単1万4280円、3連単30万1710円だったように、今年もひと波乱あり、とニラんで期待を寄せたい馬がいる。
狙いはズバリ、ガンバルマンだ。
未勝利戦(中山2000メートル)を勝ち上がったばかりだが、その勝ちっぷりがよかった。道中は少しもたついた場面があり、外に持ち出して直線へ。この時点で7番手だったが、そこからの伸びがすごかった。息の長い末脚でグイグイ伸び、前を行く馬をあっさりと捕まえてみせたのだ。
その後は短期放牧でリフレッシュされ、たくましくなって戻ってきた。1週間前の追い切りがまたよく、Wコースで併せた僚馬を直線だけで瞬く間に突き放して気を吐いていた。
手綱を取った主戦の原騎手は目を丸くして「折り合い、しまいの反応、すべての面でよくなっている。短期放牧でこんなに変わるとは‥‥。まるで別馬です」と絶賛していたほどだ。
萱野調教師も「まだ成長、良化の余地は十分。それでも能力は確かで、楽しみな馬」と満足気だった。
菊花賞を勝ち、天皇賞・春を連覇したフィエールマン産駒だけに距離の不安はなく、近親、一族にアイリッシュボール(愛ダービー)、ラストタイクーン(BCマイル)などの活躍馬が多くいる欧州の一流血脈の出。まだ細身だがバランスが取れてあか抜けた馬体の持ち主だけに、素質はかなりのものとみている。
強敵ぞろいだが、一発があっても不思議はなく、晴雨にかかわらず大きく狙ってみたい。