早いもので正月競馬は第2週目を迎え、東のメインは、よく荒れるレースとして知られるフェアリーSが行われる。明け3歳牝馬による初の重賞で、当然、桜花賞を目指している素質馬は少なくない。それだけに毎年それなりの頭数を数え、今年も各厩舎の期待馬が名を連ねており、なかなかの顔ぶれだ。
舞台は中山の芝1600メートル戦。周知のように頭数が多くなればなるほど、外枠の馬は苦戦を強いられる。スタートして加速がついたところで急に折れる最初のコーナーに出くわすため、外枠の馬はハジかれたり膨れたりして、ロスを被りやすいからだ。
まだキャリアの浅い若駒だけに、よほど力が抜けていないかぎり、そうした不利やロスを挽回することは難しく、致命傷になりかねない。
実際、過去10年を振り返ってみても、8枠でも内側の馬は勝ち負けを演じた年もあるが、大外16番の馬が馬券圏内に好走したことは1度もない。
まだ海のものとも山のものともわからない若駒同士の一戦。しかも枠順が決まっていない現段階で勝ち馬うんぬんを言いづらいことは、ご理解いただきたい。
今年もクラシック候補、マイルGⅠで大成しそうな馬が何頭か見て取れるが、中でも最も期待を寄せてみたいのは、キスアンドクライだ。
未勝利戦を勝ち上がったばかりだが、その内容がよかった。最初は馬群から離れて後方(11番手)からの競馬。そして3角手前で動いて、最後の直線では前を行く2着馬を猛追。息の長い末脚で捉えると、一気に突き放し、モノの違いを見せつけるかのような完勝劇だった。
手綱を握った松山騎手も好感触を得たようで「これからが楽しみ。まだまだよくなりそうな馬」と、期待感たっぷりに話していた。
この中間はいたって順調。稽古の動きは素軽く、実にいい感じに調整されている。
「扱いやすい馬で、思いどおりに調整できている。いい仕上がりで臨めそうだ」
と、厩舎関係者も口をそろえ、状態のよさを強調するほど。関西馬だが、デビュー戦が東京競馬場だったように、長距離輸送も問題はない。
祖母はオープンでも活躍したキュンティアで、母系が北米のGⅠ血統という血筋を思えば、今後も注目していい素質馬。
真ん中よりも内めの好枠に入ることを条件に、大きく狙ってみたい。
逆転候補はレイユールだ。新馬戦は2着馬に3馬身半差をつける楽勝劇。続く前走の赤松賞(1勝クラス)では、後方から最速の上がり脚で僅差2着に押し上げてみせた。
410キロ台の小柄な牝馬だが、あか抜けた好馬体で、素質を感じさせる1頭。昨夏の新潟記念を制し、秋のエリザベス女王杯でも4着に好走したシンリョクカの半妹だけに、人気の一角と思われるが、好走必至とみていい。
一方、中京で行われるシンザン記念は、マイエレメントの勝機とみた。
前走のGⅢアルテミスSは5着に敗れたが、ほぼ最後方から上がり最速の強靱な末脚を繰り出し、勝ち馬とコンマ2秒差まで押し上げる好内容だった。
馬体重が前走比12キロ増だったことを思えば、上がり目も十分。母系は欧州の一流血脈でもあり、やれていい。