タイトル獲得通算100期まであと1期としている将棋界のレジェンド、羽生善治九段が「決断」の時を迎えている。
3月6日に大阪・関西将棋会館で行われた第83期順位戦B級1組、最終13回戦で大橋貴洸七段と対局。102手で投了し、4勝8敗でB級2組への降級が決まった。
来期、羽生九段がB級2組に所属すると、1991年から1992年の第50期順位戦以来、34年ぶりとなるが、羽生九段は進退を明かしておらず、「いずれにしても年度末までには答えは出さないといけない」と話すにとどまった。
ではB級2組に属さなければどうなるのか。
将棋界では「竜王」「名人」といった8大タイトルとは別に、A級、B級1組、B級2組・C級1組、C級2組の5クラスに分かれる「順位戦」がある。各リーグの勝敗によって順位、ランクが入れ替わるが、それとは別に「フリークラス」が存在する。
これはB級1組以下の棋士が、順位戦終了後から年度末の間に宣言すると、「フリークラス棋士」となるというもの。羽生九段のコメントに「年度末」のワードが出てきたのはこのためだ。
フリークラス棋士は順位戦を指せなくなるが、それ以外の全ての棋戦に参加する権利と義務がある。基本的に公務や将棋普及を主眼に置いて設けられた制度のため、日本将棋連盟の会長職にある羽生九段が、一線を退いて多忙な連盟の活動に専従する可能性もあるだろう。
これまで名人経験者のB級2組降級の例は加藤一二三、丸山忠久があり、永世名人資格者のB級2組降級は谷川浩司十七世名人に続いて、羽生九段が2人目となる。谷川十七世名人は現在もB級2組で現役を続行中だが、羽生九段はどのような選択をするのか。
羽生世代のひとりで十八世名人の森内俊之は、2017年の順位戦でB級1組に降級し、46歳の若さでフリークラス転出を宣言している。宣言すれば二度と「名人」の座に就くことはできない。
(ケン高田)