前田大然(セルティックFC)が止まらない。
サッカーのスコットランドリーグ1部は3月6日、2月の月間MVPに前田を選出した。
2月の前田はリーグ戦5試合に出場して6ゴール2アシストとフル回転しただけでなく、3月8日のスコットランドカップ5回戦のレイス・ローヴァーズ戦では、ハットトリックも決めている。さらにUEFAチャンピオンズリーグのバイエルン・ミュンヘン戦でもヘッドで押し込み、ゴール。公式戦8試合の出場で10ゴールの獅子奮迅ぶりだった。
3月に2026年北中米W杯アジア最終予選(20日・バーレーン戦、25日・サウジアラビア戦)を控え、本大会史上最速出場記録を狙う日本代表にとって、前田を筆頭に三笘薫(ブライトン)、久保建英(レアル・ソシエダ)と攻撃陣の活躍は頼もしい限りだ。
前田は90分間走り回る豊富な運動量と、驚異的なスピードで前線からボールを二度三度と追いかけるプレスに定評がある。2021年のJリーグでは、23ゴールで得点王に輝いた。特にサイドからのクロスに合わせる技術は高かった。その決定力がここにきて開花したと言っていい。
ただ、だからといって、前田の日本代表での序列が上がるわけではない。現在の3-4-2-1システムなら、左ウイングバック。4-3-3システムなら左のウイングのポジション。序列からいえば、1番手が三笘、2番手は中村敬斗(スタッド・ランス)、そして前田の順だ。それが今回の活躍で入れ替わるとは思えない。
その理由は明確で、スコットランドリーグのレベルにある。今季もセルティックが独走状態で、チーム強化に繋がるような歯ごたえのある相手はほとんどいない。現に2022年から2023年シーズンに得点王、MVPに輝いた古橋亨梧(現スタッド・レンヌ)でさえ、日本代表では結果を残せない。
つまりスコットランドリーグは、長く所属する場所ではないのである。欧州移籍のきっかけとしてはいいリーグだが、できるだけ早く移籍してステップアップしないと、埋もれてしまう。
前田はセルティックに移籍して3年半になる。今季の活躍を見れば、得点王、MVPの可能性は十分にあろう。移籍するなら今夏がベスト。代理人は売り込みやすいし、本人の年齢(27歳)を考えれば、最もいい時期だ。
例えばフランスリーグに移籍すれば、中村と同じ舞台でプレーすることになる。下位のチームであってもイングラド・プレミアリーグに移籍すれば、三笘と同じ土俵でプレーできる。序列を変えるには、そのくらいの挑戦は必要だろう。
前田が移籍してステップアップすることは、日本代表の選手層の厚さにも繋がる。残留すれば本人も、そして序列も変わらない。移籍か残留か。今夏、前田の動向から目が離せないゆえんである。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。