「菅政権の目玉政策」として創設されたデジタル庁のトップが、ネットでの誹謗中傷やパワハラまがいの指示を行っていた…。
そんな疑惑が連日メディアで大々的に報じられたのが、平井卓也デジタル大臣による前代未聞の「請負先メーカー恫喝暴言騒動」である。
自他ともに認める「自民党きってのIT通」として知られる平井氏は2013年、党支援者のボランティア組織「自民党ネットサポーターズクラブ」(略称・ネトサポ)代表に就任。平井氏が中心となり、SNS上の誹謗中傷を監視してきた。
ところが2013年6月28日の党首討論を「ニコニコ動画」が生放送中、平井氏が自身のスマホで〈あべぴょん、がんばれ〉といったコメントを投稿。さらに社民党・福島瑞穂党首の発言に対し〈黙れ、ばばあ!〉などと書き込んでいたことが、東京新聞によって報じられたのである。
平井氏は同紙の取材に対し、スマホで書き込んだことを認め、「申し訳なかったが、やじみたいなもの」と釈明。これらの投稿はなぜ発覚したのか。
「バレたのは、自らのIDを表示したままの状態で書き込んだから。ネット中傷を取り締まる立場の人間が、自らそんなことを書き込んだ行為は許されませんが、極めて初歩的なものであるID表示に無頓着だったことから、本当にこの人物はITに詳しいのか、どこがIT通なんだ、といった失笑が漏れたものです」(政治部記者)
ところが、である。驚くことに騒動から8年後の2021年6月、その平井氏がなんと、菅政権が新設したデジタル担当相に就任した。永田町界隈では早い段階から「また何か問題を起こさなければいいが」との懸念が。皮肉なことに、その不安が見事に的中する。
6月11日の朝日新聞が〈事業費削減「脅した方が」五輪アプリ請負先巡り平井大臣指示〉との大見出しで、スキャンダルを報じたのだ。
いわゆる「オリパラアプリ」の事業費削減をめぐり、共同事業体に参加していたNECについて「NECには(五輪後も)死んでも発注しない」「今回の五輪でぐちぐち言ったら完全に干す」「どこか象徴的に干すところをつくらないとなめられる」などと発言。幹部職員への「脅しておいて」という音声データの存在も明らかになった。
記者会見を開いた平井氏は、釈明に追われた。
「交渉するスタッフが弱腰になったら、いくら取られるかわからない。国民の血税だから強気で交渉しろと伝えた」
そして後日、さらにワケのわからない言い訳を繰り出した。
「家内とは40年になりますけど、全く怒ったことがない私が、言葉を荒らげて怒ったことは家内にも意外だったみたいで、家で責められている」
これが「黙れ、ばばあ!」などと投稿する人物の言葉だった。
(山川敦司)