キャベツ1玉600円、白菜1玉700円、コメは5キロ4000円…。この冬は鍋も食べられなかったと嘆く国民がいる中、厚生労働省の議事録が明らかになった。
現役世代が大病した時のセーフティーネット、高額療養費の自己負担額引き上げを決めた今年1月23日の「厚生労働省社会保障審議会医療保険部会 192回議事録」だ。高額療養費の自己負担額引き上げは身内の自民党議員からも反対意見が出て、一時凍結されている。
議事録によると、引き上げ案を出したのは厚労省保健局保健課。意外にも自民党に年間7億円以上の献金をしている日本医師会常任理事の城守国斗委員は、これに反対していた。世帯収入の上昇によって国民の手取りが増えたわけではないこと、物価高騰による支出が増えていることなどを踏まえ、患者への影響の調査と検証が必要だと訴えたのである。
城守委員の慎重論に反対したのは、同審議会に参加した老人団体代表たち。特に全国後期高齢者医療広域連合協議会会長で、福岡資麿厚労大臣の選挙区でもある佐賀県多久市の横尾俊彦市長は「応能負担」、つまり現役世代の負担引き上げに賛成した。横尾委員はコメ不足の最中の同審議会で、医療費の上昇を抑制するためには健康への意識を高め、食事への配慮に力を入れることが必要だとして、次のような発言を残している。
〈一方ではがんは食事などのいろいろなことの影響を受けて発生の率が高まったり、気づいたときにはもう戻れないステージになったりしています〉
〈敬老の月に100歳の方に、私も長寿のお祝いにお訪ねして行きますけれども、ここで前に言ったかもしれませんが、「おばあちゃんの好きな料理は何ですか」と言うと「蛋白質確保のためのステーキとか、適度に体に良いものを自分で集めてきて食べている」という方々は意識が高いですね〉
現役世代がガンになるのは、まるで「食べているものが悪い」と言わんばかりの持論を展開したのだ。
2月26日の本サイトで紹介した通り、福岡大臣の選挙区である佐賀県には薬局販売、病院処方いずれも湿布薬の売り上げ世界一のトップシェアを誇る「久光製薬」(鳥栖市)がある。
日本はOECDに加盟する主要先進国の中で、社会保険料負担比率(給料に対する納税額と企業負担分も含めた社会保険料支払額)が40.4%でワースト1位。75歳以上の高齢者に湿布1パック(7枚入り)を15円という市販の100分の1の破格値で配れるのも、残りの代金を我々が健康保険料として負担しているからだ。
こんなバカ高い社会保険料負担さえなければ、現役世代は昼食をカップラーメンで凌ぐこともなく、キャベツも白菜も牛肉も値段を気にせず買え、健康的な食生活を送れるのだが。
(那須優子/医療ジャーナリスト)