3月も後半にさしかかり、各地から春の便りが聞こえるようになってきた。春は卒業や入学、入社シーズンと、なにかと環境が変化する季節だが、実は猫にとっては日照時間が長くなるこの時期は、1年で最も「恋愛したくなる」という。
というのも、メス猫のフェロモン放出には日照時間が影響しており、日照時間が長い1月から9月を繁殖期として、この期間に何度か発情を繰り返す。
ただし猫の場合、相手を選ぶのはあくまでもメス。オスはそれに応じるだけで、主導権は全てメスに委ねられている。
メスは発情スイッチが入ると、赤ちゃんに似たあの独特の鳴き声や、仰向けに寝転んだままクネクネと転げ回ったり、スリスリしてニオイ付けをするなどの行動をとる。さらに食欲がなくなって痩せたりもするが、毛づやがよくなる場合が多い。これらは性欲が高まっている特徴だといわれている。
先に触れたように、オスは選ばれるのを待つだけだが、モテるオスはだいたい5歳から7歳程度の、体の大きい「一見、経験豊富」なタイプ。ただし、いざ交尾となっても、一度に費やされる時間は長くても10秒ほど。なぜならオスのイチモツには表面に細かいトゲのようなものがあり、挿入されるメスは強い痛みを感じるからだ。そのため交尾の最中は、痛みでメスが離れないよう背後から首元をくわえ、コトに及ぶ。
お気に入りのオスと出会い、メスがそれを受け入れて交尾に及ぶと高確率で妊娠するが、メス猫が交尾をするのは発情期のみで、それ以外の時期にはたとえ好みのタイプのオスが現れても、交尾をすることはない。
一方、オスは性成熟を迎えている状態であれば、ヤル気満々。発情期のメス猫を探し、気に入ってもらえればいつでも交尾可能というわけだ。
交尾後は2カ月ほどで、メスは子猫を出産。面白いことに、猫は本能的に強い母性をもっているため、手術が施されて生殖機能がない飼い猫でも、この時期には母性が強くなり、同居する他の猫の毛づくろいをしたり、お尻を舐めたりすることがあるという。
ともあれ、日照時間が増えていくこの時期は、発情期を迎えるメス猫を巡り、基本的にはいつでも交尾OKというオスたちによる、熾烈なバトルが繰り広げられることになる。
(灯倫太郎)