プロ野球ではなかなかお目にかかることのない、アンダースロー投手。現役では広島の鈴木健矢、DeNAの颯、巨人の高橋礼など、ごく一部だが、多くは中継ぎに起用され、最後まで先発ローテーションを守り続けられる選手は残念ながら、ほとんどいない。
そんな中、オープン戦で好投を続けている広島の鈴木が、3月22日のソフトバンク戦で移籍後、初めて先発登板する。鈴木はここまで全て中継ぎで4試合に登板し、打者17人に対して被安打2で自責点ゼロ。3月2日の楽天戦では今季初勝利を挙げている。特に左打者が並んだ打線をしっかりと抑えられたのは、大きな収穫だったといえるだろう。
広島の菊地原毅投手コーチは、「一度、試してみたい。(打者)ひと回りくらい」と語っており、ソフトバンク打線を抑えることができれば、まずはローテーションの谷間などで先発登板する可能性はありそうだ。
そもそも鈴木がアンダースローに転向したのは、日本ハム時代のプロ3年目。新庄剛志監督から「下にしようよ」と言われたのがきっかけだ。投手コーチも知らなかったという、まさに突然の提案だったが、結果的にこれが防御率の大幅改善に繋がった。
2023年は24登板中12試合に先発し、6勝4敗1ホールドで、防御率2.63をマーク。鈴木の登板日は、対戦チームが左打者をずらりと並べて対策をとるほどだった。
広島のアンダースロー投手といえば、1970年代に活躍した金城基泰が思い出される。金城は1975年の広島初V達成時の胴上げ投手で、9回裏、巨人・柴田勲をレフトフライに打ちとったシーンが記憶に残っている古参のファンはいるだろう。広島にとってアンダースロー投手は、「優勝」を想起させる縁起のいいもの。新庄チルドレンが新天地で花を咲かせるか。
(ケン高田)