第10節を終了したJリーグは例年ならば、スタートダッシュに成功したチームが首位に立ち、優勝候補と言われたチームがそれを追いかける2番手グループを形成する。そして1勝もできず勝ち点3以下で低迷するチームは、監督更迭の話が出てくる頃だ。
ところが今季はどうだろうか。10節終了時点で、首位アビスパ福岡から最下位の名古屋グランパスまで、勝ち点差はわずか11。1位から8位までは勝ち点差3以内と、ひしめき合っている。毎試合、結果によって大幅に順位が変わる。この現象は何が原因なのか。ここ1週間の試合結果を振り返ってみると、その原因がわかるような気がする。
4月9日、勝てば首位に立つ川崎フロンターレが、19位に低迷する横浜F・マリノスと対戦。これを3-3で引き分けて、首位奪取に失敗した。
4月11日には、4試合負けなしで、勝てば首位に立つ柏レイソルが、6試合勝ちなしのFC東京と対決した。ところがFC東京に先制され、その後に猛攻を仕掛けるものの、追いつくのが精一杯。川崎同様、首位には立てなかった。
4月12日、勝てば首位に返り咲くサンフレッチェ広島は、J1初昇格のファジアーノ岡山に、まさかの0-1で敗退。
4月13日、前節まで首位だった町田ゼルビアが、下位に低迷する浦和レッズと対戦した。勝てば首位に返り咲く町田だったが、0-2で完敗。首位どころか、7位に後退した。
首位を狙うのが4チームもあって、どこも勝てなかった。通常は勝つのが当然であって、勝ち点を落としたチームが脱落するのではないか。これが今のJリーグであり、つまり強いチームがいない。どんぐりの背比べのようだ。
3連覇を狙うヴィッセル神戸は、開幕前からケガ人が続出した。少しずつ復帰し、なんとか昨季のメンバーに戻ってきた。それでも勝ち点3を奪うのに苦労して、2連覇した時のチームに比べると、力は落ちている。
優勝候補筆頭とみられていた広島は、開幕してからケガ人が出てきた。昨夏に加入したチームの得点源、トルガイ・アルスランはヒザの故障でドイツに帰国。期待の若手、中島洋太朗も左ヒザ半月板を負傷して、オーストリアで手術を受けた。新外国人のヴァーレル・ジェルマンも、岡山戦で筋肉系のトラブルによって担架で運ばれ、ピッチをあとにした。選手層は一気に薄くなった。
鬼木達監督を迎えて常勝軍団復活を目指す鹿島アントラーズも、一時は首位立ったものの、ここにきて3連敗を喫し、ルヴァンカップを含めれば、公式戦4連敗だ。
優勝候補に名前が挙がったチームには現在、抜け出す力がない。それが大混戦を招いている原因だ。
このまま終盤まで混線が続くのか。それともどこかが抜け出すのか。夏の補強も含めて、どこがチームを立て直せるか…。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。