例えば、現在ノーザンファームにいる繁殖牝馬ジンジャーパンチはGIを6勝した07年度アメリカ古牝馬チャンピオンで、桜花賞の本命になったルージュバックの母親だ。
「社台の馬が走るのは種牡馬の力が大きいですが、繁殖牝馬のよさも見逃せない。それで、名牝にはだいたい実績のある名種牡馬をつけています。ベスト・トゥ・ベストの配合を試み、馬を高く売る。生まれた馬を充実した施設でしっかりと育成し、走る馬に仕上げていきます。だから外れが少ない」(スポーツ紙レース部記者)
第二にあげられるのが、充実した施設。生産、育成、調教、乗馬訓練、観光を兼ねた4つの巨大な牧場が北海道にあるだけでなく、福島県と滋賀県にも外厩施設を持っているのだ。中でも画期的と言われるのが、ノーザンファーム早来とノーザンファーム空港牧場にある、800メートルを超す「屋内坂路コース」。このおかげで、雪が降り積もる冬でも極秘調教を積むことができ、若駒をビシビシ鍛え上げることができるようになった。
それだけではない。ここには自動追尾カメラと計測時計が設置され、コース頂上に設けられているコントロールルームでは調教馬の様子まで確認できる。
夏スタートの昔と違って新馬戦がダービー後の6月に始まるようになった現在では、この屋内坂路コースは強い味方となっている、と競馬関係者は口をそろえるのだ。
滋賀県甲賀市にあるノーザンファームしがらきと、福島県岩瀬郡のノーザンファーム天栄は主に放牧用に使われているが、しっかりとした調教コースも備わっており、馬の仕上げにも最適。ここで英気を養ってきた馬は、緒戦から狙い目だというのが定説だ。大阪杯で大本命のキズナを下したラキシスは、ノーザンファーム天栄から戻ってきた馬だった。
「ノーザンファームしがらきやノーザンファーム天栄を利用している栗東の調教師によれば、ここから帰ってきた馬は例外なく走りのバランスがいいそうです。左右にブレたりすることが少ない。きっと優秀な乗り手がそろっているんでしょうね」(レース部記者)
ちなみに、北海道苫小牧市にあるノーザンホースパークでは、常に乗馬訓練を行っている。
さらに、牧場には馬のケアを行き届かせるため、10人ものドクターがいる。
馬が強くなるために先行投資や挑戦を欠かさなかったことが、ノーザンファームの強さの秘訣だろう。