口取り写真に納まる、ニコニコ顔の馬主。競馬ファンの一つの憧れだろう。個人で馬を持ち、維持するには莫大な費用がかかる。しかし、一口単位で「投資」する共同馬主制度を利用すれば、誰でも馬主気分を味わえるのだ。
現代の競馬は、延べ7万人と言われる一口馬主(クラブ共同馬主)に支えられている。彼らが馬に投資することがなければ、競馬界で大帝国を築く社台グループですら、成り立たない。一口馬主クラブ(クラブ法人)は約20あるが、
「現在、馬主リーディングの1位から3位までを、ノーザン系のクラブが占めている。実際の競馬同様、一口馬主の世界もノーザンの一人勝ち状態です。ただ、1位のキャロットクラブは会員が1万5000人もいるとされ、飽和状態。そのためノーザンは、同じ大衆向けのシルク・ホースクラブに力を入れ始めているようです」(競馬ライター)
馬主リーディング3位のシルクの今年の募集馬は、キャロットクラブにも負けない超豪華なラインナップが話題で、特に昨年の年度代表馬モーリスの全弟をリストアップしている。その募集価格は1億円(総口数500、一口当たり20万円)。会員からは「高すぎる。広告塔みたいなもんだろう」との声も出ているが、預託先がノーザンの「東の拠点」堀宣行厩舎ということもあり、すぐに満口になるだろうと言われているのだ。ちなみにシルクの昨年の募集馬の売り上げは、前年比150%だった。
シルクの人気が高まるのに伴い、トップジョッキーの騎乗も増えた。ゼーヴィントやグレンツェントが戸崎圭太(36)で重賞を制覇したのが、そのいい例だ。武豊(47)も7月16日の中京・新馬戦で2年ぶりにシルクの馬(バレーロ、結果は5着)に騎乗したことが、会員の間で話題になった。
投資をするからには、誰も損をしたいとは思っていない。が、実情を探ってみると、こんな声が。
「好きなステイゴールド産駒を中心に投資し、これまでの収支は200万円ほどのマイナスですかね。重賞を勝った馬もいましたが、いつもそういう馬に当たるというわけにはいきません。人気馬は抽選になることも多いし、1勝で終わる馬もいれば、故障でデビューできなかった馬もいます。でも、勝った時の口取り写真が自宅に何枚もある。これがあるからやめられませんね」(埼玉県在住の歯科医)
この歯科医は、一口馬主歴10年だという。
ウインレーシングクラブの会員の一人が、簡単な仕組みを解説してくれた。
「会員になるためには、まず入会金を払う。すると毎月、冊子(会報誌)が送られてきます。6月頃に第一次募集がある。だいたい40~50頭ぐらいです。ウインは400口制。最初に馬の代金(400で割った金額)を払います。送られてくる冊子には、募集する馬の血統表と写真、生産者のコメントが載り、動画のDVDも付いている。牧場で歩く姿を撮った、1頭につき10~15秒ほどの映像集です。私が今持っているのは、ロードカナロア産駒の一口6万2500円の馬ですね」