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半生ドキュメント本で激白!長州力を生んだ“在日という源流”「少年時代の過酷な出来事」

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 「本当のことを言っていいんだな」──72年、郭光雄(カクカンウン)こと吉田光雄は、レスリングの韓国代表でミュンヘン五輪に出場している。のちの長州力であるが、しかし、本人がここまで掘り下げてその苦悩や葛藤、本音を激白したのは初めてだろう。半生ドキュメント本で明かされた、革命戦士誕生の裏側を追った──。

 レスリングでオリンピック出場を果たし、74年、華々しい経歴をひっ提げてプロレス入り。エリート街道をひた走るかと思われたが、長州力(63)は長きにわたり地味で鳴かず飛ばずだった。臥薪嘗胆。ついに「革命戦士」としてスポットライトを浴びた時には、輝かしいキャリアと相反するように、反骨精神に満ちたファイトスタイルで人気を博したのだ。

 そんな長州の源流をたどると、プロレスデビュー以降の不遇時代とも重なって見えてしまう。

 51年、山口県徳山市(現在の周南市)で生まれた長州は、朝鮮半島出身の両親を持つ在日朝鮮人である。周知の事実とはいえ、長州のプロレスデビュー時には、「五輪出場」との肩書が新聞で報じられても、わざわざ「韓国代表」とは紹介されていなかった。どこかタブー視されてきたのだ。

 しかし、先頃出版された「真説・長州力 1951-2015」(集英社インターナショナル刊)で本人が赤裸々に明かした、その出自ゆえに体験した苦難は生々しい。

 著者のノンフィクション作家・田崎健太氏が語る。

「長州さんは、在日ということが全てであるかのように物語化されるのは嫌なんです。それでも長州さんは、それも全て含めた半生を振り返ることに意味を見いだしてくれて、腹を決めたようにご自分の足跡を話してくれました」

 幼い頃の食事は朝鮮式。朝食には、唐辛子が入った辛い鍋や母親が漬けたキムチなどが食卓に並んだ。焼き魚や煮魚が好きな少年は、朝から食欲が湧かなかったという。

〈ある日、光雄が「朝からチゲなんか食べたくない」とごねると母親は顔色を変えた。殴られると察した光雄は窓から飛び出した。(中略)腹部に何かが当たった感覚があった。(中略)その場所を見ると服に穴が空いて血が滲んでいた。母親は竈にくべていた火箸を投げたのだ〉

 別の日には、雨の日に粗末な傘を持っていくことを拒むと傘を投げつけられた。今度は腹部に傘が突き刺さったという。それでも幼き日の光雄少年が母親を恨むことはなかった。父親の廃品回収を手伝い、庭の隅でバラックを立ててホルモン焼き屋を開いては、密造酒のマッコリを提供して家計を支えていた姿を見ていたからだ。

 元新日本プロレスの関係者が言う。

「少年時代にできたという腹部の傷跡は、プロレスラーになっても消えていませんね。今でもポコッとへこんでいて、穴を塞ぐように皮膚が内側にめり込んでいる。昔のことを話すことはほとんどありませんが、長州さんから聞かされて印象に残っているのは、ひどいイジメを受けていたということですかね。『ガキの頃からよく、ケンカじゃないけど、いろいろやられてね』という言い方で‥‥」

 小学3年生の時には、従軍経験者だったクラスの担任からも目の敵にされた。

〈「差別意識が凄かった。ぼくともう一人を毎日殴る。二人とも在日なんです」(中略)

──朝鮮の子どもは殴られても痛くないんだよなぁ。

 教師はそう言いながら、平手打ちした。

「(中略)周りの子どもが、また叩かれているって笑うんです。笑われるとぼくは恥ずかしかった。でも、屈辱で睨むなんてことはしない。恥ずかしいから笑ってやろうと思った。ぼくが叩かれて、にやっと笑うとその先生は余計に殴る」〉

 現在の長州はバラエティ番組で笑う姿を見せることも少なくないが、過酷な過去を知らされては複雑な思いに駆られる。当時は、朝鮮人という言葉を聞くと、魔法にかかったかのように自分が小さくなっていく気がした、と言うのだ。

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