8月25日の南北高官会談により、勃発直前で回避された「第2次朝鮮戦争」。が、火ダネはくすぶり続け、「開戦」のリスクは高まるばかりだという。その時、朝鮮半島で何が起こるのか。専門家への取材で、今回の危機で隠された真実に迫り、泥沼のゲリラ戦争に至る展開を完全シミュレーションする!
北朝鮮と韓国の軍事境界線である「38度線」。その日、北朝鮮を監視していた韓国軍兵士は様な光景を目撃することになる。午前4時、38度線に配備された北朝鮮の22連装220ミリロケット砲「M1991」と、6個大隊配備された170ミリカノン砲「M1989」「M1979」が一斉に火を噴いたのだ。
計約1000門から発射された大口径弾は、監視する兵士の頭上を越え韓国の首都・ソウルへと向かっていた。次の瞬間、40キロほど先に位置するソウルは火の海に包まれた。韓国軍の兵士たちは、赤く照らされた夜空を茫然と眺めるのだった──。
こうして第2次朝鮮戦争は、65年前の朝鮮戦争開戦時と同時刻に奇襲攻撃によって勃発しうるのだ。軍事ジャーナリストの井上和彦氏が解説する。
「韓国は北が一斉砲撃してきたら、まったく阻止できません。北朝鮮はハイテク兵器などなくても、旧式の単純な大砲だけで韓国を震え上がらせることができるのです。だから、韓国は先制攻撃ができないのです」
ソウルは韓国の全人口の約5分の1が居住する、政治と経済の最大中心地。攻撃後、倒壊するビルと襲いかかる火の手から逃げ惑う人々。その人の群れを、北朝鮮の砲弾が無慈悲に襲う。ローテクながら確実に攻撃成果を上げる旧式の「砲」に対抗できるのは、イスラエル製の対空防御システム「アイアンドーム」と言われている。それを所有していない韓国軍にはなすすべもなかった。
「韓国軍も新しい迎撃装置を開発したようですが、防御は無理でしょう。そもそも韓国の兵器は故障を繰り返すのが日常茶飯事です。『アイアンドーム』を配備するのにも莫大な軍事費がかかるので、現実的ではありません」(前出・井上氏)
さらにシミュレーションを続けると、韓国の一部の市民は、奇襲直前に異変を感じていた。突然、銀行の金融システムがダウン。スマートフォンなどが通じにくくなっていたからだ。元航空自衛官で軍事ジャーナリストの潮匡人氏が語る。
「サイバー攻撃です。これまでも北朝鮮の犯行ではと疑われるハッキングは多数行われています。金融や電力などインフラのシステムだけにとどまらない。在韓米軍の指揮命令系統をシャットダウンできれば、奇襲攻撃時に相当有利な状況になります」
北朝鮮のサイバー部隊は約6000人いると言われる。13年3月には韓国の約5万台のコンピュータが使用不能にされ、ATMが停止。14年には2万台以上の韓国のスマホがハッキングされている。
首都と電脳空間を同時に破壊された韓国。だが、国境線の韓国軍兵士は、程なく北朝鮮軍がソウル制圧のために、38度線を越えて一気に南下し始める姿を確認することになる。
「北朝鮮軍は120万人とロシア軍より人数が多い。対する韓国軍は60万人ほど。まさに当初は先の朝鮮戦争の時のように北朝鮮にボコボコにされます」(前出・井上氏)
進撃は地上からだけではなく、空と海からも行われた。旧ソ連が1947年に開発した木製プロペラの複葉機「An-2」(アントノフ2型)や潜水艦が続々と韓国領内に侵入したのだ。
「北朝鮮は潜水艦を60隻所有しています。通常の魚雷攻撃も並行するでしょうが、基本は特殊部隊を送り込むために用いるでしょう。『An-2』は200機持っていますが、これも特殊部隊を送り込むことが主目的です」(前出・井上氏)
北朝鮮特殊部隊員は10万人とも言われ、小銃とナイフ一本で、爆破工作や、数人でビルを制圧する力を持っている。