今週から東西ともに舞台を移し、東京で「毎日王冠」が行われる。GI馬5頭のほか、力量馬がそろう中、万券王・水戸は唯一の3歳馬アンビシャスを穴馬に指名した。一方、「京都大賞典」は、少頭数ながら人気は割れそう。
秋の東京開催。その第1週のメインは天皇賞の前哨戦である毎日王冠だ。数々の名勝負、熱戦が繰り広げられてきた伝統の一戦で、今年もファン必見である。とにかく顔ぶれがいい。
デニムアンドルビー(宝塚記念2着)とヤマカツエースが体調が整わず自重したものの、イスラボニータ、スピルバーグ、モーリス、ダノンシャーク、リアルインパクトの5頭のGI馬を筆頭として、ヴァンセンヌ、エイシンヒカリ、ディサイファ、グランデッツァ、ステファノスなどの面々による争い。まさに豪華版と言ってよい。
良馬場ならレコード決着の可能性大で、目が離せず期待は膨らむばかりだ。
馬券的にもおもしろそうである。02年に馬単が導入されてからこれまでの13年間、馬単での万馬券は6回(馬連では3回)。1番人気は3勝、2着2回。2番人気は2勝、2着2回。実力、人気どおりでは決まりにくいレースであるようだ(過去2年、1、2番人気馬は連対していない)。
ここが秋初戦で休み明けという実績馬が多くいることもあるだろう。今回も有力どころの多くは3カ月以上実戦を遠のいている。能力を出せる状態に達しているかどうかの見極めが大切になるのは言うまでもなかろう。ただ本番(天皇賞)は次。完璧な作りでないことは確かだ(といって勝ち負けしてしまう馬がいるので難しい)。また、ここ何年かは3歳馬の好走が目立っており(10年、12年は3歳馬のワンツーでともに馬単は万馬券)、充実しきる5歳馬が最も連対を果たしていることも特徴だ。
ということを頭に叩き込んで、あらためて顔ぶれを眺めてみる。ヴァンセンヌ、エイシンヒカリ、そしてディサイファなどがGI馬を差し置いて人気になりそうだが、とにかくいずれも力量馬で難解この上ない。
目移りするところだが、穴党として最も期待したいのは、アンビシャスだ。
3歳馬がダークホースになると前述したが、ただ1頭のこれが3歳馬からの挑戦。初の古馬との顔合わせになるが、断じて軽く見てはいけない。なぜなら菊花賞挑戦をハナから捨てて、盾を目指してきたからだ。
この馬も3カ月ぶりの実戦だが、短期放牧でリフレッシュされてからじっくりと乗り込まれてきた。3歳馬だけに古馬に簡単に負けるようでは盾挑戦を諦めざるをえないが、そうならないようハードな稽古を課せられてきた。厩舎側の覚悟のほどが、これまでの調整過程から伝わってくる。
1週前の追い切りもリズミカルで軽快。仕上がりのよさは明らかだ。
「雰囲気が実にいい。臨戦態勢は整っている。古馬と初の手合わせになるが、そうヒケは取らないはず。力は出せる状態にある」
音無調教師はじめ厩舎スタッフはこう力説するが、張りのある締まった馬体を見れば納得だ。
新馬戦を楽勝したように気のいいタイプで、久々を苦にしない馬なのは確か。関東までの長距離輸送も慣れており、間違いなく力は出せるだろう。
問題はここで通用するか、どうか。前走のラジオNIKKEI賞は56.5キロのハンデ頭でありながら、2着に3馬身半の差をつける圧勝劇を演じている。そうできる芸当ではない。
であるなら相性がいい東京での競馬。身上の強烈な末脚をもってすれば古馬と互角、あるいはそれ以上の勝負になっていい。今回はまた54キロでの競馬。これも味方になってくれよう。
ラッシュラッシーズ(コロネーションSなどGI3勝)ほか近親、一族に活躍馬が多くいる良血。晴雨にかかわらず大きく狙ってみたい。