全国民ひとりひとりを個別の番号で管理する「マイナンバー」の通知が10月5日から始まった。システムはもとより、情報漏れやメリットの有無が議論されてきたが、はたしてこれは庶民にとって損なのか得なのか。これだけは知っておくべき項目と舞台裏事情をガッツリとお教えしよう。
「共通番号の危険な使われ方 マイナンバー制度の隠された本質を暴く」(現代人文社)の共著者である牧野内総合法律事務所の水永誠二弁護士が、マイナンバーを解説する。
「国民ひとりひとりに12桁の個人識別番号を付ける制度です。これにより、個人情報の名寄せが『共通番号』をマスターキーとして、迅速かつ確実に行えるようになります。官と民のさまざまな分野の個人データが生涯不変の1つの番号で管理されることになるため、氏名や住所、果ては性別が変わろうと、一生涯にわたる、分野を超えた個人データの確実なマッチングが行われる予定です」
いわゆる「国民総背番号制」であり、税、社会保障、災害対策における情報を管理し、行政の効率化を図る、というもの。早い話が、全国民の収入を把握することで脱税を防止したり、生活保護の不正受給をなくすことなどが目的だ。
まず今月から来月にかけて、個人番号、氏名、性別、住所、生年月日が記載された「マイナンバー通知書(通知カード)」が届く。これだけでもいいのだが、任意で「個人番号カード」なるものを作りたい場合、同封されている申請書に顔写真を添付して返送することで、来年1月以降に受け取ることができる。ICチップが埋め込まれ、「通知カード」の個人情報に加えて、裏面にはマイナンバーが記載された、公的な身分証明書として使えるものだ。
このカードにより、各行政機関における手続きの煩わしさから解放され、18年には免許証や保険証などとも一体化される予定だという。通知書は住民票記載地に送付されるが、そのまま放置、あるいは受け取りを拒否するとどうなるのか。
「郵便局に1週間程度保管されたあと、住民票がある市町村に戻ります。そこで3カ月ほど保管しますが、その間にお問い合わせがなければ、通知書は破棄します。ただ、番号は生きており、行政側はサービスに利用させていただきます」(内閣官房マイナンバーコールセンター)
ネットカフェ難民や簡易宿泊所で生活する人々にも届くのかというと、
「場所にかかわらず、住民票がある所に送ります」(前出・内閣官房マイナンバーコールセンター)
ネットカフェに住民票登録が可能な埼玉県蕨市市役所に問い合わせてみた。
「現在も数名の方が登録されています。郵便物なども受け取ることができます」
東京・山谷の簡易宿泊所密集地、いわゆるドヤ街で暮らす男性は言う。
「住民票は妹が住むところが登録地か‥‥いや、もうどこなのかわからないな。マイナンバーなんて俺の生活には関係ないし、ここを住所地にして受け取りたいとは思わないね」
もちろん服役中の囚人も条件は同じで、
「受刑者本人の希望があれば、刑務所を住民登録地にすることも可能です。現時点では、刑務所に送られてきた通知書も法の手続きにのっとったうえで本人に手渡される予定です」(法務省矯正局)