波瑠は東京都足立区出身で、13歳の中学1年生の時に現在の事務所に所属。「南波瑠」の芸名でファッション誌の専属モデルを務めるかたわら、女優業にも挑戦し続けてきた。
透明感あふれるイメージからは、さしたる苦労もなく現在のポジションを手に入れたようにも思えるが、実はかなり厳しい下積みも経験しているのだ。
「06年のWOWOWで芸能界デビューを果たして以降、コンスタントに女優の仕事は続いていましたが、どれも印象の薄い脇役ばかりでした。人気携帯小説『恋空』を映像化した作品では映画版、ドラマ版の両方に出演していますが、いずれも主人公の友達という中途半端なポジション。当時の流行だった茶髪の女子高校生ファッションも魅力的とは言いがたかった。08年に出演した映画『リアル鬼ごっこ』では、登場した瞬間、電車にひかれて死ぬという端役扱いでした」(映画評論家・秋本鉄次氏)
そんな状況の中、本人が、
「女優という仕事に対する意識が大きく変わった」
と語る作品が、深津絵里主演の映画「女の子ものがたり」(09年)だ。出演に際して本人がインタビューでこう答えている。
「自分の(演技)レベルが低すぎて、監督から求められていることに応えられない。今まではこのレベルで許されていただけなんだ、と悟りました」
当時の波瑠はちょうど高校卒業の時期。本格女優への道を模索し始めたものの、仕事がなく、焦りのあまり「何か資格を取ろうか」と悩んだほどだという。それでも「逃げ道を作ったらダメだ」と踏みとどまり、月に30本のペースで映画を観るうち、
「どの女優さんもすごいけど、この人も人間だし、演技にこうじゃいけないという正解はないんだ」
という、ある種の“開き直り”に達したのだという。
光明が見え始めたのは長編映画初主演となる10年公開の「マリア様がみてる」。同性愛をテーマとしたライトノベルの実写化だ。波瑠は女子高で下級生が憧れるロングヘアの清楚な“お姉さま”役を演じた。このことで、一部マニアから注目を集め始める。
「今をときめく広瀬アリスも共演しており、いわゆる“姉妹萌え”嗜好を持つオタク系男性層に人気となりました。モデル時代の同期で親友の女優・大政絢も、『いたずらっ子でピュアなところがあり、かまってあげずに放置するとチューとかしてくる』と、素顔を明かしています」(芸能評論家・小松立志氏)
より多くの人たちの注目を集める契機となったのは、12年に放送されたNTTドコモのCMだろう。
「それまでのロングヘアをバッサリ切って現在のショートカットに変えています。ショートにしたことでその美人ぶりが際立ったうえ、他の女優との差別化にも成功しましたね。結果的にショートカットのイメチェンが大きな転機となったようです」(前出・秋本氏)
これまで「オーディションで200連敗はしている」という波瑠だが、この頃から徐々にメディアへの出演が増え始める。14年に入ると宮藤官九郎脚本の連ドラ「ごめんね青春!」の出演や、人気芸人・ハライチの澤部と共演した年賀はがきのCMが次々と話題を集めている。
こうしてみると、今回のブレイクは決して偶然ではなく、地道な積み重ねの結果であることがよくわかる。