優勝から遠ざかること20年。長期低迷の屈辱を耐え忍んできた広島カープがスタートダッシュで6連勝、エースがノーヒット・ノーラン達成と、今年は何かが違う。大型補強の巨人もなんのその。指揮官も本気で公言する「優勝」がいよいよ現実のものになるかと、大盛り上がりなのだ。
「間違いなく優勝しますよ」
「今シーズンはいよいよ優勝もありうるんではないかとの声がありま・・・・」
記者がこう切り出すやいなや、熱烈カープファンの漫画家・杉作J太郎氏は、興奮口調でまくしたてた。
「いや、間違いなく優勝しますよ!!去年もいけそうだとは思ったんですが、故障者が出たあと、控え選手がヘビーローテーションで、信じられない失速をした。でも今年は層が厚いですよ。投手陣がこんなにそろった状態で、打撃陣も左と右がバランスよくそろった。とにかく人が育ちましたねぇ」
シーズン前、スポーツ紙6紙の評論家55人による順位予想で、14人が広島をAクラスに指名。うち2人は優勝、3人が2位に推している。もし優勝となれば、91年、山本浩二監督でリーグ制覇して以来、21年ぶりとなるのだ。
開幕2連敗でスタートした広島は3試合目に引き分けたあと、6連勝。しかもその間、4完封勝ち。横浜DeNA戦でエース・前田健太(24)がノーヒット・ノーランを達成し、ドラ1右腕・野村祐輔(22)は同じくDeNAを8回無失点、圧巻の投球でプロ初勝利を挙げると、単独首位に浮上した。広島OBの野球評論家・北別府学氏が解説する。
「投手王国ですよ。マエケン、バリントン(31)、福井優也(24)、篠田純平(26)に、右肩を故障していた大竹寛(28)が戻ってきたし、新人の野村も加わった。これだけの先発陣がそろうのは12球団でもトップクラスだと思いますよ。野村は調子が悪くても、悪いなりの投球ができる。1年間ローテーションを守れば、新人王の第一候補でしょうね」
同じくOBで野球評論家の安仁屋宗八氏は、広島を1位予想している。
「今までにない楽しみがありますよ。先発6人に加え、中継ぎは中崎翔太(19)や今村猛(21)の他、左の中村恭平(23)もいい」
広島県出身で、毎年、球場で観戦するという風見しんごが、さらにあとを引き取って言う。
「抑えのサファテ(31)の前にミコライオ(27)という、ちょっと打ちづらい投手も入りましたね」
新入団のミコライオは、2メートル5センチの球界最長身右腕。左足を三塁側へ大きく踏み出して投げる変則サイドスローで、右打者は特に苦労すると言われている。
10年に沢村賞を獲得したマエケンは昨年、10勝12敗。北別府氏が言う。
「僕の経験から言っても、昨年は勝てないだろうと思っていた。沢村賞を獲った疲労がたまっていましたから。本人も『体が重たく感じる』と言っていたし。今年は『エースのこだわりを持っていきたい』と話していました」