続いては、調教師編である。こちらの主役は、年間リーディングの上位争いにたびたび顔を見せている大物調教師Z。騒動の顛末を明かしてくれたのは、個人的にもZと親しかったさる競馬専門紙の元記者で、それほど古い話ではないという。
「Zは有力馬主らの預託馬をガッチリと抱え込んでいたヤリ手で、特別レースや重賞レースでもバンバン勝ち星を上げていました。当然、実入りも悪いわけはなく、その羽振りのよさは厩舎関係者の間で垂涎の的になっていました」
ただ、このZ、昔からオンナ癖が悪く、これに端を発したトラブルが絶えなかったという。そして夏場にローカル競馬が開催される都市で逢瀬を重ねていた愛人を巡り、調教師生活最大とも言うべき騒動が勃発したのだ。
「実はこのZ、あろうことか、夏のローカル開催を中心に、勝ち負けになりそうな自厩舎の出走馬の馬券を、この愛人に指示する形で買わせていたんです。何しろ、馬を走らせる調教師が指示するわけですから、馬券の的中率もなかなかのものだったようです」(前出・専門紙元記者)
しかしこれだけなら、Zとその愛人による馬券購入の事実が明るみに出ることはない。Zには羽振りがいいくせにケチな一面があり、それが原因で、愛人がしだいに不満を募らせていったというのだ。
元記者がさらに言う。
「やがてZと愛人は破局を迎えました。ところがZのケチは相変わらずで、彼女への手切れ金も出し渋る始末。そして、それまでため込んできた不満が限界点に達した時、彼女はコトの一部始終をマスコミにブチまける挙に出たんです」
Zの愛人女性が一部のマスコミにファクシミリで送りつけた文面には〈私はZ調教師の愛人だった女性です。実は、私はZから馬券を買わされていました〉‥‥と、破局までのいきさつが実名入りで洗いざらい書かれていたという。
「告発文書がJRAにも送られていたかどうかはわかりませんが、一時期、この話題が競馬関係者の間で持ち切りになったのは事実です。しかし、取材許可権限を持つJRAへの配慮もあったのか、結局、マスコミがこの一件を記事にすることはありませんでした。ギリギリのところで逃げ切ったZに対しては、競馬記者の間から『Z師、危ないところだったな』との声が上がっていましたよ」(専門紙元記者)