酒の勢いか、当時の怒りか野村氏は語気を荒らげる。
「そのあと、別のクラブに移動したんやけど、エレベーターの中でも『こんな所でそんなことしたらアカンですよ』と、注意するほどのことしとったわ。ホンマ勘弁してほしかったわ。後日わかったことやが、その日はXちゃんと“初めての日”やったそうや。清原が『後ろの方から指を入れられるのが気持ちええんや』と言うとったって、他の選手がXちゃんから聞いたらしいわ」
ところで、快楽に溺れた清原容疑者は警察にマークされ続けていた。オリックスに移籍した06年、この年の10月に野村氏が覚醒剤取締法違反の罪で逮捕されたが、
「逮捕10日で起訴されたのに、45日間も留置場で勾留されたんや。その間の取り調べは清原に関する内容が大半やった。捜査員から4~5人の名前が載ったリストを見せられて『知ってる名前はあるか?』と言われた。全員、清原と関係があるシャブの前科持ちらしい。せやけど、ホンマに知らんから答えんかったし、調書の判も押さんかった」
判決が出てから2カ月後、突然、清原容疑者から電話がかかってきたという。
「俺が清原のことを警察にしゃべってないか探りたかったんや。『しゃべってへん』と答えると、か細い声で『そうですか、すんません』と言ってきおった」
だがその後、野村氏を激怒させる事態が勃発した。当時を思い出して興奮したのか、野村氏は酒とタバコの勢いが止まらない。
「清原の子分みたいなヤツから脅しの電話がかかってきたんや。『よけいなことはしゃべるな』と。そんな連中の力を借りなくとも、先輩である清原本人が『お前、なんやコラ!』と言えばわかりますし、失礼があったら謝りますよ。後日、再度、清原本人から連絡があった時、あまりにも偉そうに言うから『あそことられるぞ、コラ!言いたいことあるなら直接来いや!』と言い返したんや」
その時、無言で電話を切った清原容疑者は、すでに忍び寄る警察の足音に脅えていたようだった。
「翌日以降、春キャンプの打撃練習で、ボールがまったく飛ばなかった。あまりのひどさにコリンズ監督は『本当に彼が2000本打ったのか』とあきれとったようや」
清原容疑者は、この年の春キャンプの中盤、急性胃腸炎で3日連続で練習を欠席。その後、二次キャンプ地である高知の地を踏むことなく帰京した。
「偉そうに言える身分やないけど、俺は清原に覚醒剤をやめる機会を2回与えたと思っとる。1回目は06年に俺が捕まった時。2回目は14年4月、週刊文春に匿名でコメントした時。実はその前にマトリ(麻薬取締官)が清原の裏付けで俺に接触してきた。これが最後のチャンスと文春にしゃべったんや。今回の清原の逮捕劇は、今もシャブに手を染めてるような現役選手が断ち切る最後の機会やと思ったほうがええな」
「自身に危害が加わることがあれば、球界全体が震撼する情報を公開する」と語った野村氏は、記者と握手をすると足取り軽く帰路についたのだった。