阪神が早くも来季の「首脳陣探し」を始めている。「超変革」を旗印にした阪神は、金本知憲監督(48)が積極的に若手を起用しているが、目立つのは野手ばかり。チーム低迷につながっているのが、投手陣の「未変革」だった。
阪神の裏事情に詳しい関係者が言う。
「“能見2世”と言われる岩貞祐太(24)がブレイクしたものの、期待のもう1人の左腕、横山雄哉(22)が故障。代役で使ったルーキーの青柳晃洋(22)も楽天戦でプロ初勝利をつかんだのはいいが、2戦目で馬脚を現した。セットアッパーとして使った石崎剛(25)も楽しみな戦力だったのに、これまた故障した。投手がなぜ育たないのかという議論がチーム内、球団内で起きており、『投手コーチに問題あり』となっている」
育成の問題だけではない。金本監督は「俺はピッチャーのことはわからんから」と、矢野耀大作戦兼バッテリーコーチ(47)と香田勲男投手コーチ(51)に、継投も含めて投手陣の起用を丸投げしているが、継投ミスで何試合もゲームを落としているのが現状だ。関西マスコミ関係者が嘆く。
「矢野コーチには指導者経験がなく、現役時代は名捕手でしたが、目先だけを見て先を読めない。春先のヤクルト戦で、マテオ(32)の3イニング起用などのムチャをやって失敗しています。香田コーチも一軍のメイン投手コーチは初。結局、阪神は事実上、中継ぎと抑えがいない状態で戦っている。投手部門のコーチとしては2人とも失格ですよ」
新ストッパーとして獲得したマテオはフォームに致命的な欠陥があるのに、どのコーチも修正ができず、肩を痛めて二軍降格。藤川球児(35)を先発から中継ぎに、さらに中継ぎから抑えに再転向させて新外国人のドリス(28)をセットアッパーに置いているが、藤川の球速は一向に戻らず、綱渡りの投球を続けている。
こうした状況を改善できるコーチがいないことに金本監督もフロントも危機感を抱き、「来年勝つためには、信頼と実績のある投手コーチを呼ばなければ」と、「シロウト首脳陣」に見切りをつけ、早くも来季を見据えた「新任」探しが始まっているわけである。
実は昨秋、金本政権が誕生する際、最初に白羽の矢を立てたのが、金本監督も広島時代に一緒にプレーをした大野豊氏(60)だった。14年には秋季キャンプで臨時コーチを務めたが、その指導が好評で、「岩貞ブレイク」の基礎を作ったとも言われる。
「ところが、正式打診を行う前の交渉過程で大野氏から『阪神のような大変な球団は荷が重い』と、断りの連絡があった」(スポーツライター)
困り果てた金本監督は金村暁(40)、高橋建(47)の両氏に声をかけたが、いずれも指導者経験がなく、メインの投手コーチとしては難があったため、金村コーチはブルペン担当、高橋コーチは二軍に配置となった。
来季投手コーチの最有力候補は誰なのか。大野氏への再説得案と同時に名前があがっているのが、「優勝請負人」と呼ばれる大物。かつて阪神で投手コーチを務め、日本ハム時代にダルビッシュ有(29)、楽天時代には田中将大(27)を育てた、現ソフトバンクの佐藤義則投手コーチである。前出・阪神関係者が明かす。
「阪神コーチ時代には金本監督は現役選手。関係も悪くなかった。ただ、ソフトバンク入りした経緯に、すんなりと阪神カムバックとはいかない事情がある。佐藤コーチは14年まで楽天で投手コーチを務め、当時、指揮を執っていた楽天・星野仙一球団副会長(69)が体調を崩した期間に代行監督を任せられましたが、星野氏が楽天監督を辞任する際にともに退団。星野氏がソフトバンクの王貞治球団会長(76)に佐藤コーチの再就職を頼み、ソフトバンク入りを果たしました」
現役時代の金本監督をFAで阪神入りさせたのは、当時監督だった星野氏。ホットラインはある。かつての恩師、そして王氏にどう筋を通すかが「優勝請負人」招聘の鍵となるのだ。