確かに坂井信也オーナーが田中を推し、金本監督は佐々木を主張していたこともあり、直前まで情報を集めて競合の少ないほうでいこう、との方針が出ていたという。球界関係者が続ける。
「でも坂井オーナーが『見る目がある金本監督に映像を見て決めてもらいなさい』とフロントに号令を出したことで、佐々木に決まっていたんですよ。それがドラフト当日のスカウト会議で突如、金本監督が大山の一本釣りを主張し始めた。なぜだかわかりますか」
ここまでの舞台裏を説明する記事で、どれ一つとして真相に迫ったものは見当たらない。球界関係者はさらに、驚愕の事実を明かしてくれた。
「それはね、占い師のお告げだというんですよ。ドラフト前に、金本監督が心酔している占い師に相談したところ、『今年はくじ引きをしたら負けます。負けたあとの運も低下します』というお告げをもらったと。あの長嶋茂雄(80)もそうでしたが、超一流の結果を出した勝負師は、そういう超常現象的な、見えない世界に頼る傾向が強いんですよ。それで金本監督は『くじは引きたくない。もし引くならば社長、お願いします』となった。フロントのトップにしても、責任を負うくじは引きたくない。そこで当日、佐々木が競合しそうだとの情報が入ってきて、『それならくじのない大山でいきましょう』と。『点が取れないこのチームは野手がウイークポイントだから、将来の4番を作らないといけない』と、金本監督が強く主張したらしいんです」
ドラフト当日に入ってきた情報というのは、ヤクルトの佐々木1位指名が濃厚で、もしかすると楽天も競合してくるかもしれない、というもの。もしヤクルトとの一騎打ちとなれば、昨年の高山俊(23)を巡って、真中満監督(45)の「当たりくじ勘違い」でドタバタ劇を繰り広げた「因縁の再戦」となる。ただ、お告げでは「負ける」と出ているし、負ければメディアに昨年と比較しておもしろおかしく報道される。さらにお告げによれば、くじに挑んだ場合、そのあとにいい選手が残っていないことになる。結果、金本監督は急遽、確実に一本釣りできる大山の指名に心が傾いたのだという。
チームにとって重要なドラフト1位指名が当日、実に不可解な理由で変わってしまうということに、「組織としてフロント、スカウトは何をしていたのか?」という批判の声が、OBからも聞こえている。
が、実はこの「占いドラフト」がまかり通る背景には、「金本監督が言いだしっぺならば、フロント、スカウト陣ものちのち責任を免れる」という阪神ならではの特殊な内部事情があるという。
「どうも阪神という球団は、周囲が想像する以上に坂井オーナーが絶対権力を握っているようなんです」
こう話すのは球団関係者だ。坂井オーナーが、オフのFA補強、外国人獲得、ドラフトからコーチ人事に関するまで「金本監督の要望を聞いてあげなさい」と免罪符を渡していたのだ。