事件を起こす直前に退会!?
代表選考が行われていた時期はまさに父親が逮捕された直後だった。まして父親は、理沙子が所属していた静岡県協会の会長だったわけで、協会があえてJOCに事実を報告しなかった意図も見え隠れしている。
ちなみにJOCはこう説明している。
「選手の身内の問題を協会がJOCに報告する義務やルールはありませんし、それによって協会が選考した選手について内定が取り消されることはないです」
とはいえ、前出の協会関係者はこう言う。
「全日本協会の会長は糾弾派の指摘に対して、静岡県協会は昨年7月に退会したから、原田徹が事件を起こした時にはすでに協会とは無関係で、わざわざ説明する必要がなかったからだとしているんです。でも糾弾派は、事件を起こす直前に“偶然”退会していたはずなどないと思っている」
もはや主役であるはずの理沙子があずかり知らぬところで、協会内の生臭い話が進行していたのだ。
同競技の全日本協会会長を直撃した。
──静岡県協会長でもあった原田徹氏の事件を早急にJOCに報告しなかったのは、隠ぺい目的があったのでしょうか。
「理沙子のお父さんが逮捕されたのは事実です。昨年7月、彼から私に退会のことで電話がありました。その時点で事件内容は把握していませんし、何かまずいことがあれば相談に乗るとも話しましたが、彼が話さないまま7月末付で退会届を受理しました。事件がわかったのは10月。隠ぺいするしないという話ではありません」
──原田徹氏が協会の人間ではなくなってから起こした事件だから、協会とは無関係ということですね。
「そういうことです」
──静岡県協会が7月の段階で退会していたのであれば、その協会の下で活動をしていたと思われる理沙子選手に選考が行われた11月時点で、五輪出場資格はあったのでしょうか。「理沙子は東京都に所属していたと思います。大学に移ってから、そうだったと記憶しています。オヤジさんのしたことは社会的に許されないけれど、とにかく今は、国民の期待を背負った彼女がロンドンで活躍できるよう環境作りをしているところです」
事件より前に、理沙子は雑誌の対談企画で父親への思いをこう話していた。
「もちろん感謝の気持ちがあります。○(前競技)を始めるきっかけも、○(現競技)を始めるきっかけも、突き詰めればいつも父でした。自分が好きなことが続けられるのもありがたいです」(○は伏字、カッコ内は編集部注)
美少女格闘家がロンドンで夢のメダルをつかんでもその横に父親の姿はない。