芸能

病魔と闘う荒ぶる役者たちの不屈秘話 「第3回・渡瀬恒彦」(2)タバコの火は自分でつける

20161103p2nd

 俳優・永井なおきは、90年から2年半ほど渡瀬の付き人を務めた。短い期間ではあったが、渡瀬から現場で教わったことは今も忘れない。

「雪山のロケで、僕はスニーカーで来たものだから寒くて震えているんです。渡瀬さんに『寒いところで寒そうにしていたら一般人だ』って言われましたね。お前も役者なんだから、という意味です。実際、渡瀬さんは雪山でコートを着ない撮影が終わっても、すぐに暖かいところに走るなんてことはしなかった」

 それが渡瀬の美学である。さらに、この現場では渡瀬の男気が一同を感激させたと永井は言う。

「朝に届くはずだった弁当が遅れて、それを昼の休憩で出されたからゴハンはカチカチ。渡瀬さんは『これだけスタッフが頑張っているのに何だ!』と怒って、これを回収。スタッフを近くのサービスエリアに引き連れて、自腹で温かい食事をふるまっていました。ただし、そこには責任者である局の上層部は連れて行きません」

 永井が何代目かの付き人を務めた時、先輩から言われた“申し送り”がある。もし、現場で渡瀬がプロデューサーにキレそうになったら、お前が先に殴られて阻止しろと。

 渡瀬は、それまでのスター俳優とは何から何まで違っていた。

「打ち上げでプロデューサーが渡瀬さんのタバコに火をつけようとすると『自分でやるからいいよ』と制する。スター然とした扱いは苦手なんです。そもそも、撮影現場にたまにしか顔を出さないプロデューサーを極端に嫌うんです」

 渡瀬は看板シリーズをいくつも抱えているが、キャストだけでなく、スタッフの変更もよしとしない。同じメンバーで作品と向き合うことに重きを置いているため、末端のスタッフにこそ気遣いを見せる。

 永井が現場でいつも持ち歩くのは、渡瀬が腰かけるためのイス、台本、そして救急セットの3点だが、これが真夏の炎天下のロケで威力を発揮した。

「渡瀬さんに救急セットからコールドスプレーを出せと言われて、それを渡すと、暑さで死にそうになっているスタッフ1人1人、首の後ろに吹きつけて回っていくんですよ」

 付き人を辞めて以降も永井は、年に2回のペースで渡瀬の自宅を訪ね、近況報告をする。直近で会ったのは、渡瀬の胆のうガンが明らかになった翌日だった。

「ご自宅でトレーニングをしていらして、それが終わるまで待っていろと。それからリビングに案内され、いつものように僕の近況をニコニコした顔で聞いてくれました」

 事務所が公表したわけではないが、92年から続く「十津川警部シリーズ」(TBS系)も内藤剛志への交代が報じられた。04年には、かつての妻である大原麗子の共演希望を聞き入れ、大原にとって最後のテレビ出演をかなえてあげた。

 そんな渡瀬にとって、体調不良で十津川警部役を降りるのは無念なことであろう。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
【高校野球】全国制覇直後に解任された習志野高校監督の「口の悪さ」/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
3
エスコンフィールドに「駐車場確保が無理すぎる」新たな問題発覚!試合以外のイベントでも恨み節
4
「子供じゃないんだから」佐々木朗希が米マスコミに叩かれ始めた「温室育ち」のツケ
5
ミャンマー震源から1000キロのバンコクで「高層ビル倒壊」どのタワマンが崩れるかは運次第という「長周期地震動」