一時的に片目が見えなくなったり真っ暗になるなどの視力障害が起きる「黒内障」という病がある。ほとんどが一過性でまもなく正常に戻るため放置されがちだが、脳梗塞を発症する危険をはらんでいるというから、実はとても怖いのだ。
広告代理店に勤務するA氏に、仕事帰りの酒場で異変が起きた。最初は左眼が張り付くような違和感をおぼえる。その感じが続くので、眼鏡を外して眼を拭こうとして、左眼に視力がなくなっていることに気づき、愕然とする。しかし、10分ほどで何事もなかったかのように元に戻った。翌日、訪れた医院で下された結果が、黒内障だった。高橋クリニックの高橋明院長が言う。
「生活習慣病などの原因で動脈硬化が進行し、頸動脈の分岐付近が細くなったり、脂肪やコレステロールがたまったりで脳への血流が減少する。あるいは血の塊が脳のほうへ飛んでいき、目に栄養を運ぶ血管の流れが悪くなることによって起こります」
白内障や緑内障はよく聞くが、黒内障はあまり耳慣れない病名である。年齢を問わず多く起こるというが、前述のとおり、一過性で症状がすぐ消えるのが、かえってやっかいなのだ。
さらに、一過性黒内障は白内障や緑内障とは違って、目の疾患ではないという。実はこれは、一過性脳虚血発作(TIA)に分類される症状であり、脳梗塞の発症を防ぐことを目的に、抗血小板剤や抗凝固剤の内服治療が行われている。つまり、受診すべきは眼科ではなく脳神経科になる。
しかし抗血小板剤や抗凝固剤には内出血や消化不良、下痢等の副作用の懸念もある。東洋医学に詳しい鍼灸師の木本祥子氏がこうアドバイスする。
「東洋医学(五行説)では、春は肝(肝臓等)の季節で、肝臓に熱がこもります。温度でいうと40度以上で、体温より高くなる。頭寒足熱とは真逆で、肝陽上亢といって、のぼせの症状が起こるのです。肝臓同等に温度が高いところは脳。のぼせが起こると、脳もいつもより温度が急上昇しています。なので頭部に熱がこもり、頭痛やめまい、眼科系症状も引き起こすことになる」
対処としては、熱を取ること。保冷材などを肋骨の上に乗せて冷やすといい。就寝前に冷やして寝ると効果があるという。大きな寒暖差の今の季節は、体調管理を万全に。
(谷川渓)