米海軍はシンガポールを出港した米原子力空母「カール・ビンソン」を、オーストラリアに向かう予定から急きょ変更して、朝鮮半島に派遣。攻撃機F/A-18「スーパーホーネット」など、約90機の戦闘機が搭載され、臨戦態勢は整っている。また、NSCは91年に当時の“パパ”ブッシュ米大統領が撤去した、在韓米軍への「核兵器の再配備」の検討も始めていたのだ。
「05年以来、米韓軍事合同演習で、米軍はレーダーに捕捉されないステルス戦闘機を平壌の上空に飛行させています。北朝鮮に迎撃手段はなく、種類が核でも通常兵器でもいつでも撃てる状態にある」(外信部デスク)
最初の一撃と目されるのが、非核兵器で史上最強の爆風爆弾「MOAB(全ての爆弾の母)」。13日には、アフガニスタンでイスラム国(IS)の施設に対して初使用したことが発表された。圧倒的な武力の誇示は、北朝鮮に対する威圧とも見られている。
こうしたトランプ氏の「警告」に、金正恩氏が臆病風を吹かせてくれたらいいのだが、「逆効果」となることも考えられるようだ。
「活中論巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス」(講談社)の著者でアジア情勢に詳しいジャーナリストの近藤大介氏はこう語る。
「シリアと北朝鮮を敵にした“2正面作戦”を行うのは、アメリカでも難しい。そもそも、トランプ政権は盤石ではありません。外交を司るのは国務省ですが、いまだに国務副長官、国務次官、国務次官補さえ決まっていない。ブッシュ(ジュニア)政権のように、ラムズフェルド国防長官など強硬派が一致団結して戦争を遂行した時とは違います。繰り返されるアメリカの挑発行為に、次は自分が襲われると思った金正恩氏が核ミサイル開発を加速させ、暴発した時にはたして防げるのかは疑問です」
追い込まれた金正恩氏の「反撃」で脅威なのは、韓国の首都・ソウルへの攻撃だ。南北の軍事境界線の「38度線」から、約50キロしか離れておらず、十分に射程圏内である。
「長射程砲で一斉砲撃を仕掛けられた場合、阻止するのは不可能です。これまで北朝鮮はいろいろな脅し文句を言ってきましたが、『ソウルを火の海にする』というのは、本当に実行できます」(井上氏)
約1000万人のソウル市民が犠牲になるだけではなく、外国人旅行者などを含め、甚大な被害が予想される。不安と緊張が高まる中、韓国では「4月朝鮮半島危機説」が流れ、パニック状態に陥っていた。