5月下旬から大分県豊後大野市で発生した地割れは81カ所に及び、現在も拡大を続けている。これを瑣末な自然現象と片づけてはいけない。西日本巨大地震の前兆であり、さらには重大な「原発事故」も引き起こしかねないからだ。
大分県で発生した「謎の地割れ」は、現在も1時間に数ミリ単位で拡大。避難勧告の対象も3世帯から9世帯に広がり、自治体は被害の長期化をにらんで仮設住宅の設置を決定した。
注目すべきは、日本列島のおよそ西半分を貫く最大の活断層、中央構造線上で起きている点だ。地震学者で武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が言う。
「阪神・淡路大震災は2カ月程度で収まりましたが、熊本地震は1年が経過した今も震度4の余震が続いている。つまり、あの地震によって中央構造線そのものが活発化しているんですよ。大分の地割れについて言えば、地割れから地震に発展したケースは過去にないが、何しろ中央構造線上で起こっているので、どうなるかはわからない。約400年前の慶長地震は“3連弾”でした。別府、伊予、伏見と大きいのが立て続けに起きた。今後、中央構造線があちこちで揺れる可能性もある」
この「慶長地震」は、1596年9月上旬から、現在の愛媛、大分、そして近畿地方でマグニチュード7クラスの地震が相次いで発生したことから「慶長の連動地震」とも呼ばれる。
豊後大野市で冒頭のような地割れ現象がこれまで起きたことはなかっただけに、不気味さは募るばかりだ。5月24日、現地調査に入った国の土砂災害専門チームは、地割れの原因について、
「地中の深いところで地滑りが起き、それが亀裂となって地表に現れている」
との見解を示した。
防災ジャーナリストの渡辺実氏によれば、
「地滑りも、活断層の活動の一つです。地震はドラスティックなもので、今、大分で起きている地盤の変異は中央構造線という巨大な活断層の活動の一つと見るべきでしょう。熊本地震が起こり、中央構造線が活発化した背景には、フィリピン海プレートが九州を押し込んできていることが考えられます。中央構造線が刺激されると、歴史上起こった天変地異が繰り返されるかもしれない」
熊本地震は“序章”にすぎなかったとの見方も出てきた。