夏の甲子園での最高成績がベスト4止まりの県が7県あるのだが、そのうち岩手県、山形県、山梨県、福井県、島根県、長崎県についてはすでに触れた通り。では最後の7県めはどこなのか。答えは鳥取県である。
現在の鳥取西が鳥取中だった1916年第2回大会と20年第6回大会、鳥取中から鳥取一中と校名を変えて出場した24年第10回大会と29年第15回大会と計4回。さらに戦後には56年第38回大会での米子東と過去5回のベスト4進出経験がある。この時の米子東は岐阜商(現・県岐阜商)に延長10回の末1‐2でサヨナラ負けし、県勢初の決勝進出を阻まれてしまった。そしてこの年以降、鳥取県勢はベスト4はおろか、ベスト8にすら進出できていないのである。
そして最後に残った県。つまり夏の甲子園史上、一度もベスト4経験がない県だが、これは富山県である。ベスト8経験は47年第29回大会の高岡商、58年第40回大会の魚津、67年第49回大会と73年第55回大会の富山商、69年第51回大会の富山北部、13年第95回大会の富山第一と6回あるのだが、どうしても準々決勝の壁を突破できないでいるのだ。
だが、ここで一つ面白い発見がある。鳥取県はベスト4経験があるものの、ベスト8から最も遠ざかっていて、それからもう半世紀経ってしまっているという事実である。さらに米子東の時代は甲子園に出場するチームの数が現在の49代表よりももっと少なかった時代。2つ勝てばベスト4進出が可能だった。それは同時に米子東がベスト4に進出した56年以降、鳥取県代表は夏の甲子園で1大会中、2勝以上したことがないということなのだ。
かたやベスト4経験のない富山県だが、こちらも73年第55回大会の富山商を最後になかなか夏の甲子園では2勝以上したチームが現れなかった。88年からは10年連続初戦敗退するなど、2勝どころか1勝するのも難しい状況が続いていたが、13年第95回大会で2回戦から登場した富山第一が秋田商を5‐0、木更津総合(千葉)を8‐0で敗り、40年ぶりの県勢2勝以上をマーク。その翌年の14年第96回大会で3回戦敗退ながらも富山商が初戦で日大鶴ヶ丘(西東京)を2‐0、2回戦で関西(岡山)を3‐1で降して2年続けての2勝マークとなったのだ。
これに対する鳥取県だが、平成に入って以降の成績を調べてみると、初戦突破はわずか6度だけ。2勝目どころか初戦突破が県勢としての目標のような感じになっているのが現状だ。
今大会に出場する富山県代表・高岡商は初戦で東海大菅生(西東京)と、鳥取県代表の米子松蔭は何と優勝候補筆頭の大阪桐蔭と激突することになった。ともに強敵である。
高岡商も米子松蔭も、これらの強豪に勝って、県勢の悲願に近づくことができるのだろうか。
(高校野球評論家・上杉純也)