現在、夏の甲子園大会での組み合わせ抽選はフリー抽選となっているが、かつては初戦で近県同士の対戦を避けるための東西対抗形式が取られていた。そしてこの東西対抗形式が導入されるきっかけとなったのではと思われる対戦カードがあった。それが77年第59回大会の第1回戦で激突することになった早稲田実(東東京=現在は西東京)と桜美林(西東京)の東京都対決である。
ともに初戦となった2回戦から登場。互いに手の内を知り尽くしているだけに序盤は出方を探っている感じで試合の流れも淡々としたものだった。3回表に早実が1点を先制すると6回裏に桜美林が追いつき、1‐1で終盤戦に突入したが、結局は地力で勝る早実が8回表に3点を入れ、4‐1で快勝。桜美林は前年夏の優勝校だったが、同じ東京都勢の早実にV2を阻まれた形となった。
そしてこの東京都勢同士の初戦対決が影響したのか、翌年以降は初戦の組み合わせ抽選をあらかじめ東西に分けてから行い、近県同士が初戦からぶつからないような配慮がなされたのである。この形式は78年の第60回の記念大会から06年の第88回大会まで29年間続けられることに。ちなみに東京勢同士の対戦はこの試合以前には春の選抜で1度、そしてこの試合以後にも夏の選手権で2度。計4回実現している。しかも春の選抜は72年第44回大会の決勝戦だった。日大桜丘と日大三という日大系列対決となり、5‐0で日大桜丘が快勝。日大三は前年の春の選抜覇者だったが、兄弟校に史上2度目となる春の連覇を阻まれる結果となった。
夏は95年第77回大会の準々決勝で帝京(東東京)と創価(西東京)が激突。8‐3で勝利した帝京が、結果的にこの大会を制し、2度目の夏の優勝を飾っている。この15年後の10年第92回大会では関東一(東東京)と早実(西東京)が3回戦で対戦。10‐6で関東一が勝利している。
(高校野球評論家・上杉純也)