松山商(愛媛)対三沢(石川)、箕島(和歌山)対星稜(石川)、早稲田実(東東京)対駒大苫小牧(南北海道)など夏の甲子園の名勝負には幾多の延長戦がつきものだ。その中でも極めて珍しい体験をしたチームが存在する。11年第93回大会での如水館(広島)だ。何と大会史上初となる3試合連続で延長戦を戦ったのである。
まず1回戦の関商工(岐阜)との試合は2‐2で迎えた延長13回裏、ノーアウト一、三塁からレフト線へのタイムリーが飛び出し3‐2のサヨナラ勝ち。2回戦の東大阪大柏原戦は4‐4で延長戦に突入し、10回表に1アウト一、二塁のチャンスをつかむとそこから3連続のセンター前タイムリーで3点を勝ち越し7‐4で試合を決めた。3回戦の能代商(現・能代松陽=秋田)との一戦も1‐1の同点で延長戦へ。12回表に失策で1点を勝ち越されたが、裏の攻撃で1アウト一、三塁のチャンスをつかむと次打者がファーストゴロ。このゴロを相手野手が処理するスキを狙った三塁ランナーの好走塁で、まず同点とし、さらに2アウト一、三塁からレフト前へのサヨナラ打で3‐2と劇的勝利をもぎ取ったのだ。
過去、春の選抜では80年第52回大会の帝京(東京)と03年第75回大会の花咲徳栄(埼玉)が1大会の中で連続ではない3試合の延長戦を戦っているが、同一チームが同一大会で3試合連続延長戦となったのは春夏通じて史上初の珍事だった。
しかし、延長戦続きの疲れがあったのか、続く準々決勝の関西(岡山)との試合では9イニングを戦い3‐8で敗れている。
(高校野球評論家・上杉純也氏)