日本全国に4000万人いるとも言われる花粉症患者の落胆の声が聞こえてきそうだ。日本気象協会は、花粉の飛散量について、前シーズンに比べて「非常に多い」(東北)、「多い」(関東甲信)との予測を出した。百合子サン、まさかあの公約を忘れたわけじゃ‥‥。
「(花粉症による)社会的なある種のロスを考えますと、林や森などの根源的な問題、さまざまな医療・医薬品の開発を含めて、花粉症ゼロという身近な課題に取り組んでいきます」
昨年10月、衆議院選挙を前に新党「希望の党」を立ち上げた小池百合子東京都知事(65)。同氏が「希望への『道しるべ』」として掲げた「待機児童ゼロ」「満員電車ゼロ」など12項目の中でもとりわけ耳目を集めたのが「花粉症ゼロ」だった。
それから半年。いよいよ花粉の季節がやってきた。
だが、相変わらず街には眼鏡とマスクで顔を覆う老若男女の姿があふれ、耳鼻咽喉科は連日診察待ちの患者でいっぱいだ。
「小池さんが16年の都知事選、そして昨年の衆院選で掲げた『花粉症ゼロ』に関しては、正直、何もしていないというのが率直な感想です」
そう指摘するのは、行政の「花粉症対策」を取材してきたフリーライターの小川裕夫氏である。
そもそも、東京都による花粉症対策の取り組みは、石原都政時代の05年に遡る。
「石原慎太郎元都知事(85)本人が花粉症に罹患し、そのつらさを実感したことで原因を調べたところ、多摩地区にある広大な山林が大きな要因だと判明。それから花粉対策、つまりスギの伐採に乗り出したのです」(前出・小川氏)
とはいえ、森林には水源涵養や土砂災害防止、土壌保全といった役割があるため、手当たりしだいに伐採することはできない。そこで東京都では06年から「花粉の少ない森づくり事業」をスタートさせ、花粉の少ない品種に植え替えていくことで花粉量の減少に努めてきた。
ちなみに、花粉が少ないスギは、従来のスギと比べると花粉量はたった1%。植え替えによってスギ1本あたりの花粉が99%抑制できる計算だが、なかなかそうコトは簡単に運ばない。
まず、スギが植林されている山林の多くは個人の所有物で、伐採には所有者の許可が必要になる。行政といえど、強制的に伐採するのは不可能だ。
さらに、国内林業の衰退も悪影響を及ぼしている。1964年に木材の輸入が全面自由化されて以降は、安い輸入木材に押されて、国産材の需要は減る一方。切っても売れないのだから、林業事業者は赤字を出してまで植え替えをすることに消極的なのだ。
そんな複数の原因が複雑に絡み合い、花粉飛散量の少ないスギへの植え替えがうまく進んでいないというのが現状である。