芸能

大杉漣「66歳の突然死」を招いた腹部破裂「SOSサイン」(2)僕は下積みだと思ってない

 持病はなかったと言われる大杉が「重度の腰痛持ちだった」と証言するのは、水道橋博士である。

「大杉さんとは13年、映画『BROTHER』についてインタビューしたのが初対面でした。その日、俺は立ち上がれないほどの腰痛で車イスに乗ってたんだけど、北野映画の常連・大杉さんはギックリ腰の常連で、インタビュー収録の合間、合間に話の腰を折って腰痛話に没頭したね」

「転形劇場」という劇団の役者時代の大杉は、会話をしない、瞬きもしない、腰をかがめて動く、という縛りのある舞台をやっている途中に突然、ギックリ腰になり、舞台上で一歩も動けなくなったことがあったという。

「だから、ありとあらゆる腰痛治療院に通っていて、その結果、たまたま乗ったタクシーの運転手に聞いた“タクシー運転手の駆け込み寺”と言われる治療院に行ったら、大杉さんの腰痛は一発で治ったというの。俺もその治療院に行ったけど、残念ながら俺の場合は治らなかった。腰痛は傷の深さも治癒への長さも千差万別でね。まあ、今後、腰痛が出るたび、大杉さんに思いをはせるだろうね」(前出・水道橋博士)

 執念の腰痛克服は「300の顔を持つ男」とも評された役者魂に通じるようだ。

 近年の有名人の訃報でも異例の愛され方を示す大杉だが、それは飾らない役者人生を反映している。世に知られる前にピンク映画の出演を数多くこなしたことは有名だが、初主演作「変態マル秘産婦人科」(80年、新東宝)で助監督を務めた俳優・飯島洋一氏が当時を語る。

「大杉漣は初主演ということもあって、芝居が硬かった。そこをピンク界の巨匠である渡辺護監督にネチネチとつつかれ、いつまでもカメラを回せなかった。半ばノイローゼみたくなってたよ」

 やがて、主宰する劇団で培った演技力と肩肘張らない持ち味が認められ、ピンク映画の出演依頼が殺到。

「下元史朗と並んでピンクのエース級だったね。いいヤツだったから、皆が使いたがった。最後は『シン・ゴジラ』(16年、東宝)で総理大臣を、『アウトレイジ最終章』(17年、ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野)で日本最大組織の組長を演じたのだから、大出世だったね」(前出・飯島氏)

 ちなみに大杉は、ピンク映画を「下積み時代」と称されることを嫌ったと映画評論家・秋本鉄次氏が言う。

「僕は下積みだと思ってやっていない。下積みだと、暗くてつらくて、マイナスイメージしかない。世間的な脚光がなくても、それはすばらしい仕事、誇りを持ってやっていた仕事だ、と言っていましたね」

 役者としての技量もまた、当時、活力のあったピンク映画で磨かれた。

「小市民からバリバリのヤクザまで、本当にやれない役がない。特に周防正行監督の『変態家族兄貴の嫁さん』(84年、新東宝)は小津安二郎へのオマージュなんだけど、大杉さんは笠智衆の役をやった。まだ30代なのに、それがすごく似合っていた。そういう落ち着いた枯れた役の一方で、痴漢やのぞきの役もこなす引き出しの多さが大杉さんの魅力」(秋本氏)

 40代になった大杉は、すでにピンク映画からは卒業していたが、それでも、生活のために来る日も来る日もVシネ出演を重ねていた。亡くなる直前までドラマ共演した松重豊や遠藤憲一と同じく、仕事を断るという選択肢は存在しなかったのだ。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
暴投王・藤浪晋太郎「もうメジャーも日本も難しい」窮地で「バウアーのようにメキシコへ行け」
3
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
4
侍ジャパン「プレミア12」で際立った広島・坂倉将吾とロッテ・佐藤都志也「決定的な捕手力の差」
5
怒り爆発の高木豊「愚の骨頂!クライマックスなんかもうやめろ!」高田繁に猛反論