芸能

大杉漣「66歳の突然死」を招いた腹部破裂「SOSサイン」(1)通常の腹痛とは違った激痛

 あまりにも突然の訃報だった。名バイプレイヤーの命を奪った急性心不全。防ぐ手だてはなかったものか──。故人の生き様を振り返りつつ、ここに追悼したい。

 2月21日、俳優・大杉漣が急性心不全で亡くなり、芸能界のみならず日本中に衝撃を与えた。66歳。あまりに早すぎる。

「大杉さんといえば、07年に事務所を独立した頃、心労からの激ヤセか、顔が一回り小さく見え、体調を心配する声もあった。とはいえ、その後は徐々に回復し、近年は持病の類いも聞かなかった。前兆が何もなかった突然死ということで、『自ら命を絶ったのでは?』と取材に動いたメディアも出るほど大騒ぎでした」(スポーツ紙芸能デスク)

 大杉は亡くなる前日の2月20日午後9時頃まで千葉・富津市内などでドラマ「バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~」(テレビ東京系)の撮影に参加。共演者らと飲酒も交えての食事をしたあとにホテルの自室に戻ってから、出演者のグループLINEで腹痛を訴えた。異変に気づいた松重豊がタクシーで千葉県内の病院に連れていったが、容体は好転せず、3~4時間後、共演者と妻らにみとられながら、そのまま帰らぬ人に。発表された死因は急性心不全だった。

 20日以前に同ロケを見学したファンが言う。

「外ロケの合間に大杉さんは、共演者の方々と楽しそうに談笑していましたが、今にして思えば気になることがありました。何度か、一人だけ車に戻ってこもることがあったんです。どこか具合が悪かったのかなと」

 しかし、急性心不全は日常的な痛みの蓄積とは性質が違う。世田谷井上病院・井上毅一理事長が語る。

「急性心不全というのは文字どおり急に来ますからね。特に寒暖の差にさらされる冬期は、心臓、血管が原因の突然死が起こる可能性が比較的高いんですよ。例えば今回のように、飲食店から外へ出たり、夜中にトイレに起きる時など、暖かい場所から急激に寒い場所に移動した際に起こりうる。

 解剖結果を見ていないので何とも言えませんが、腹痛を訴えたというのは、急性心筋梗塞などの虚血性心疾患からくる放散痛もしくは関連痛が考えられる。そうであれば、通常の腹痛とは違う、張り裂けるほどの痛みだったと思います。急性心不全は症状の始まりが胸痛ばかりでなく、腹でも肺でも脳にだって出るんです」

 腹部破裂かと思わせる激痛──。予兆となった「SOSサイン」もむなしく大杉の命を奪ったという、急性心不全を防ぐ手だてはないものだろうか。一般的に、心不全を防ぐには生活習慣病に陥らないことが一番だとされているが、前出・井上理事長はこう話す。

「年齢に限らず40代でもなる人はなり、原因となりうる要素はいろいろですが、冬場は冷えきった風呂場やトイレを暖め、寒暖の差をできるだけ少なくする。そして、お酒はほどほどにということぐらいでしょう」

 半ば運しだいのようにも聞こえるから恐ろしい。これが向き合える病気であったならば、大杉は生還できたかもしれないのだ。

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