実質的な「コンビ」解消。それと同時に、小百合自身も輝きを失っていった。「愛と死の記録」は、作品自体はよかった。しかしこれが、日活での小百合の最後のいい作品だった。
その輝きと引き換えに、小百合は渡とのロマンスを得ることになる。「愛と死の記録」での共演後、急速に親密になったのだ。映画では抱き合うラブシーンもあったが、まさにそのまま私生活でも惹かれ合うことになる。
日活では後輩だった渡は最初、小百合に、
「先輩、演技のことを教えて下さいよ」
などと言っていたのだが。
小百合にとって、渡が「初めての男」だと言われている。デート現場は小百合の実家。外で会おうとすると、小百合の両親から「今日は行けません」と電話が入る。渡は応接間に通され、小百合の両親同席でお茶を飲んだ。
そんな逢瀬が続く中、小百合は結婚したい相手だと、両親に渡を紹介していたが、どうやら両親は、堅い職業の勤め人と結婚させたかったらしい。そしてその相手を婿養子のように迎え入れ、小百合は手元に置いておきたかった──。
小百合はそれに反発し、燃え上がる。とはいえ、そこは箱入り娘の性なのか、煮え切らない状態が続いていく。渡は酔っ払うと、
「なんで俺のところに飛び込んできてくれないんだ」
とボヤいては、小百合に電話していたというのだから‥‥。
小百合は結局、両親の意を汲み、大恋愛は2年余りで終幕を迎えた。小百合は惚れっぽく冷めやすい性格。渡はなぜもっと強引に結婚へともっていかなかったのかと、私は歯がゆくてしかたがない。もし二人が結婚していたら、小百合はその後、石原プロモーションで、まき子さんに次ぐ「女帝No.2」になっていたかもしれない。いや、小百合はそんなシャシャリ出るようなことはしないかもしれないけど。
そういえば後年、石原裕次郎は二人の破局について、
「あ、あれは俺がやめろと言ったの」
と、まるで自分が二人の結婚に反対したからだ、というような発言をしている。
あれは渡をかばっての、裕次郎なりの言葉なのだろう。芸能界の先輩と一緒になれば、アタマを押さえられてキツイぞ、という意味だったのかもしれない。
渡との一件には、こんな後日談もあった。
後年、私の自宅に小百合が遊びに来た時のこと。裕次郎が乖離性大動脈瘤で入院した際、渡が、
「ボスに何かあったら、自分も生きてはいられない」
というような発言をしたのだが、それに小百合が、
「あれはちょっと(大げさすぎてどうなのか)‥‥と思った」
破局当時は泣いたというけど、さすがにもうすっかりケロッと話題にしていたのだ。
恋愛といえば、石坂浩二(76)との関係も思い出される。彼女はある関係者に、
「すごく好きだったけど、妹みたいに思われて恋愛にならなかった。女として見てくれなかった」
と打ち明けたという。一方で私はある芸能界の人物から、こんな話を聞いた。
「石坂は小百合に結婚を申し込んで断られたらしい。その後、石坂はすぐに、浅丘ルリ子(77)に結婚を申し込んだ。それを知った小百合は、その変わり身に驚いたんだと‥‥」
どちらが本当なのか、今となっては分からない。
中平まみ(作家)