歯磨き粉もダメ、デンタルリンスもダメ。となると歯磨きの際、我々は何をどうすればいいのか。
「何も使うことはありません。唾液だけで十分。唾液の量は健康な人ならだいたい、1日に1.5リットルくらいですが、私たちは手を切ったりヤケドしたりした時、反射的にその部分を舐めるでしょ。唾液には消化を助ける作用だけでなく、抗菌物質が入っているので、体に不要なものを洗い流す作用があるんです」
ところで、かつて記者は歯科医から「歯磨き中に出血したら、悪い血は出したほうがいい」とアドバイスされたことがあるが、
「僕らも昭和50年代、担当教官から『それは悪い血だから出血させてブラシをしなさい』と教わったことがありますが、『じゃあ、どこからどこまでが悪い血なんですか』と聞いたことがありました。そんなもの、見てわかるわけじゃない。ただ、血を出せば当然、血管の中にバイ菌が入るわけですから、出血を伴う歯磨きは危険だと考えるべきです」
歯周病を予防できるという歯磨き粉に意味がなく、「悪い血は出したほうがいい」という指導も過去の遺物。実はそれらが歯周病を悪化させ、さらにはさまざまな病気を引き起こすリスクファクターになっていたとは驚愕するばかりだが、そうならないためには、本当に正しい磨き方をマスターするしかない。
というわけで、籾山医師が推奨するのが「フォーンズ法」と言われる歯磨き法である。
「歯肉の血管は歯に近づくほど細くなり、歯から遠いところでは太くなる。だからまずは、太い血管周辺を柔らかいブラシでなでるようにブラッシングする。それを裏表、上下左右、まんべんなく行うことで、血液循環がよくなります。上は上顎のあたり、下はベロの奥に太い血管が走っています。これが末梢へ行くほど細くなる。だから、太いところを最初に磨いてマッサージする。強さはくすぐったいくらいがちょうどいい。下はベロの下まで入れ、外側は口を閉じて軽く磨いてやると効果的です」
血液循環がよくなれば必然的に歯肉の色や形が変わり、腫れが引いてくるのが実感できるという。
フォーンズ法でしっかりマッサージしたあとは、歯の付け根や歯と歯の間にいる歯周病菌退治のブラッシングをする。その際にぜひ取り入れてもらいたいのが「突っ込み震わせ磨き」という方法だ。これは読んで字のごとく、ブラシの毛先を歯の付け根や歯と歯の間に突っ込んで、小さく振動させるというものだ。