日本中が怪物・江川卓に沸いた73年夏を制したのが、機動力野球の広島・広島商だった。
「春の選抜では作新学院との準決勝を制して準優勝しています。この時、広島商はバントでの空振りすらも想定して戦術を組み、江川相手に『打たずに勝つ』攻略法を見せつけました。これが他校の『夏の江川対策』にもつながり、待ち球やプッシュ打法に苦しんで、江川は四球で自滅したとも言われています」(高校野球ウオッチャー)
四国も多士済々の強豪校を輩出した地域だ。
「守備固めの選手交代からの『奇跡のバックホーム』の96年の愛媛・松山商、松井秀喜の敬遠で高校野球界きってのヒールとなった高知・明徳義塾が02年に果たした『禊』の日本一。徳島の池田は82年に優勝していますが、翌年のベスト4のほうが印象に残っています。やはり、『池田といえば4番エース水野』なんですよ」(手束氏)
準決勝で「1年生KKのPL」に敗れ、「やまびこ打線」が2年連続でこだますることはなかった。
九州・沖縄勢において、甲子園史上最も衝撃的だったチームとしては、なんといっても07年の佐賀・佐賀北を選ばないわけにはいかない。
「春先に、プロ球団も巻き込んで高校生の野球留学問題の議論が起き、その是非が問われる中での開催でした。そこで優勝するのが、野球特待生ゼロの公立・佐賀北‥‥。出来すぎなくらいドラマチックですよね」(高校野球ウオッチャー)
激戦の過程では、佐賀北への忖度とも取れる温情ジャッジが一部メディアで話題になったが、
「球場の空気を味方につける、それも含めて高校野球の魅力だと思います」(手束氏)
はたして今年の夏はどんなドラマが生まれるのか。今回、かみじょうに歴代ベストナインをセレクトしてもらったところ、なんと現役組から2人の球児が選出された。
「大阪桐蔭のセンター・藤原恭大君、それに報徳学園のショート・小園海斗君ですね。中学時代にチームメイトだった2人はお互い強烈なライバル心を燃やしていて、昨年のU-18ワールドカップでは1、2番コンビを組んで、藤原君はチーム打点王、小園君はチーム首位打者という結果を残しています」
今年もスゴすごぎるプレーが生まれそうだ。