夏の甲子園が記念すべき100回大会を迎えた。8月5日の開幕から各地区の代表校が熱戦を繰り広げているが、今年はどんなドラマを見せてくれるのだろうか。そんな期待を胸に、各都道府県から歴代の「スゴすぎる49校」を選抜。怪物投手の力投からミラクル逆転劇まで、甲子園を沸かせた激闘を再び!
北海道は東京と並んで、毎年2校が選出されるが、その戦績は芳しくない。本企画の監修者で「高校野球を200%楽しむ観戦読本」(実業之日本社)の著者である、スポーツジャーナリストの手束仁氏が語る。
「北北海道は例年なかなか結果を残せずにいた。そんな中で、最も勝ち残ったのが77年の旭川実です。この時はまた、対戦相手が甲子園の常連校ばかりでしたから、よけいにインパクトが強いですね」
一方の南北海道では、04年、05年に57年ぶりの夏連覇を達成した駒大苫小牧も印象深い。当時の駒大の強さは圧倒的で、翌06年はあの「ハンカチ王子vsマー君」の年。それでも3年連続で決勝に進出しているのだ。駒大の指導法を取材したスポーツライターの美山和也氏が振り返る。
「雪が解けて再び凍ったカチカチのグラウンドでノック練習をすることがよくあったそうです。冬場は練習できない、だから北海道が優勝できなくてもしかたない。そんな生徒の固定観念を壊すため『凍ったグラウンドではノックしない』という常識からまず壊しにかかった、と香田誉士史監督が話していました」
かくして、深紅の大優勝旗は津軽海峡を越えた。しかし、南北海道から選んだのは、歴代最多の38回の出場を誇る北海だ。
「もちろん、駒大苫小牧はすごい。ただ、駒大の台頭以前から北海道の高校野球を長年リードしてきたのは北海です。その北海が16年に準優勝をした、ということのほうが道民にとっては意義のあることじゃないかと思っています」(手束氏)
決勝では、それまで4完投と一人で投げ抜いてきたエースの大西健斗が、疲労から球が走らず無念の途中交代。栃木の作新学院に苦杯を喫したが、古豪復権を全国に印象づけるものだった。
青森をはじめ、東北勢はいまだに優勝旗を手にすることができずにいる。手束氏が解説する。
「北海道や東北は、やはり冬場の練習環境が他県よりも厳しく、69年の青森・三沢や71年の福島・磐城のように、ごくまれに決勝まで駆け上がるチームがポッと出てくる程度でした。しかし、豪雪でも影響のない大型の室内練習設備が徐々に導入され、また、交通インフラの整備で遠征による強豪校との対戦が容易になってきた。そのこともあり、他地域の有名校との差がなくなり、ベスト4まで残ることも珍しくなくなってきた。それを象徴するのが、89年の宮城・仙台育英と秋田経法大付の奮闘。それぞれ、準優勝とベスト4でした。平成の高校野球は、東北勢の躍進とともにありましたが、今では八戸学院光星に青森山田、聖光学院、花巻東、東北など、誰もが知る強豪も増えてきています」
今夏こそ──東北に住む全ての人の悲願達成はすぐそこまで来ている。