お盆が過ぎ、猛暑が一度は収まった土曜日の夜。レギュラーの生放送を終え、放送局から程近い飲食店で“来週の打ち合わせ”を済ませた殿は、「今な~‥‥」と“ここから先は仕事の話じゃないけど”といったリラックスムードを醸し出しながら、実に興味深い話を聞かせてくれたのです。
「特に何にも興味がねーんだよ。ま~小説は書いていて楽しいし、映画の台本も作ってて楽しいのは楽しいんだけどよ、それで“当てたい”とか、ハリウッドで映画を作りたいとかよ、そんな気はさらさらなくてよ‥‥。車もな~、全然興味なくなっちまったし。金もよ~、どんな仕事やって、いくら入ろうが何にも興味ねーしな。もう何年も前から『長く生き過ぎちゃって、早くくたばらねーとまずいな』なんてことも思ってんだけどよ、自殺するわけいかねーしな」
と、最新の“ビートたけしが今思っていること”について、唐突につらつらつらと語りだしたのです。
で、その場にいたディレクターの方が「食事とかはどうですか? どこどこのおいしいものを食べたいとか、そういうのはないですか?」と、質問すると、
「うん。特にないね。何でもいいって言っちゃ~、何でもいいんだよね」
と、さらりと答え、続けて、
「まー、夜中に絵描いたり小説書いたりしながら、『俺はなんで今こんなことやってんだろ?』とか『頑張って生きるってことがそんなに大事なのか?』とかよ、『死ってそんなにいけないことなのか?』とかな。一人で延々と考えるのが楽しいって言っちゃ楽しいのかもな。だって、頭の中であーだこーだ考えるのは金いらねーし。ただよ、それだけじゃ脳内からアドレナリンが出ねーから興奮しねーんだよ。だからたまに酒飲んじゃうんだけどな」
ちなみに、この日の殿は何かを悲観しているトーンではけしてなく、極めて明るいトーンで、これらの、ある意味「たけし哲学」を語っていました。で、そんな語りを聞いたわたくしが、
「殿は今まで、全てをやってきてしまったので、ある意味、今、達観した感じになってるんじゃないですか?」と、当然の見解を述べると、殿は一瞬、“そうなのかもな”といった表情をされたあと、
「スケベなこともまったく興味なくなっちまったしな。もう小便する時ぐらいしか、ポコ○ン触ってねーぞ」
と、一気に笑いへとかじを取り、どっと笑わせると、続けて、
「とにかく家帰ってテレビでも見るかな」
とポツリとつぶやいたのです。この時、すかさずこちらが、「あっ、テレビは好きなんですね!」とツッコむと、すぐに面白いほうに乗る殿は、
「うん。帰ってエアコンつけて、甘いもんでも食べて、WOWOWでも見るかな。って、何にも達観してねーじゃねーか!」
と、軽く“ノリツッコミ”を決めたのでした。やはり、“最後は笑い”が殿なのです。はい。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!